瞼映の魔名術と大都王宮の警護隊長 2
この半年の大部分は嫌味や
その動機は、大都の内外で頻発していた暴動である。
美名とフクシロへの報告には「大都は治安良好」と上げてはいるが、それは「思ったよりは」である。
ゼダンによる統治体制の
さて、明良がこれらに対し、何をか為せていたかというと何もない。
ただ
報告を受けたゼダンは
それがついに溢れだしたのが三週前。
「次の段階に移るべきだ」と明良は考えた。
ひとまず、これまでは大都の王に悪事なく、見る限り、健全な政策が
引き続き、悪逆者から目を離せないのは確かだが、ただの付きっきりではよくない。自らが為すべきこと、為さなければと思う心。背きつづけることはできない。
思い立った明良は、冬入りした機にゼダンに進言する。「王宮殿の警護に特化した隊を作れ。俺をその隊の長に据えろ」と。
はじめは鼻で笑ったゼダンであったが、最終的には明良の要求は通った。旧態の守衛手を引き継いで「大都帝国」にすでにあった「近衞隊」から分派し、王宮警護隊が発足されたのである。「分派」はゼダンからの指示であり、なにかと公金出費がかさむなか、新規の人員確保と練磨の費用を省いたわけである。
警護隊の任は明良が進言したとおり、王宮殿、ならびに「大都王」の警護である。「近衞隊」は町全体の警護の任であるから、基本的には王宮の外と内とで棲み分けがされる。変事の際にはこれに限らず、相互に協力する体制となる。
当然、隊の
こうして、明良は「ゼダンの
「アナガ、いつまでいるつもりだ?」
待機室の入り口に立っていたのは、ふたりと同じ黒の隊服を身に着けた男。体つきがしっかりしていて、
警護隊の副長、セ・インダ。
本日の夜回り組を率いていた彼は、先ほど待機室を出発していった組と任を交替してきたのだろう、他の八人とともに室内へ入ってくる。
「もう、お前の組は巡回に行ったぞ」
「は、はぁ……」
この男は、守衛手時代、近衞時代からのアナガの
「俺が呼び止めたんだ。アナガに落ち度はない」
「……役務に関することでしょうな?」
とげとげしい目つきで問う副長に、明良は閉口してしまう。「警護隊の役務に関すること」ではなく、少年のまったくの私事で彼を留めていたものだから、バツが悪いのも当然である。
「
このインダは、それをよく思っていない様子。はじめの頃、突然に現れ、新設の隊を統率する立場となった明良のことを
「勤仕の最中は雑念を払って専心いただきたいものですな」
「……すまん。留意する。アナガも悪かった。組を追いかけてくれていい」
「……はい」
「悪いことをしてしまった」と、室を出て行くアナガの背中を見送る明良に、ふたたびインダから「隊長」と声がかかる。
「
「ゼダンが俺を……?」
「ええ。今日であれば、いつでもいいとは仰っていましたが」
「……すぐに行こう」
アナガに引き続き、明良も警護隊の待機室を出て行く。
(やはり、美名の言うとおりか? 俺にはヒトを率いるなど向いていないな……)
回廊を進む明良は、最後に寄越されたインダの
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