夢乃橋事変の少年と名づけ師 3
「……ど、どういうことだ?」
「魔名教……教会……?」
「あれって……、『
魔名解放党の群れはどよめきはじめた。
魔名教の現行体制への異議を知らしめる「
しかし――。
「この橋は封鎖され、皆さんに逃げ場はありません! お願いいたします……。抵抗することなく、投降願います!」
この「烽火」の場に至って正体を
橋の上の群集は必然、混乱に包まれた。
「どういうことですか! 黒頭様!」
「『烽火』を為すのではないのですか?!」
「
「……そうだ」
「お前らしくない『手立て』だな……」
「……俺の策ではない」
この状況は、
「私たちの信仰が……、私たちは、どうやって救われていくのですか?!」
「答えてください! 黒頭様!」
「……投降をお願いします!」
何を問われても、訊かれても、金髪のクメンは投降を求める。
(ここまではうまくいっている……。このままおとなしく、降伏してくれ……)
この「夢乃橋」の策のなか、最悪の状況は、ニクラなり、昼間の正体不明者であるなり、「本物の黒頭巾」が居合わせた場合であった。
その場合は、クメン師が
しかし、この「囲い」の仕掛けは現状よりも広範囲なうえ、即席であるから抜け穴ができやすく、不充分である。ゆえに、こうなった際は先手を取る必要があった。党員たちが「偽の黒頭巾」に虚を
だが、現況はこの、「想定しうる最悪の状況」よりだいぶよい。
「本物の黒頭巾」は未だ姿を現していない。
「囲い」も、もともとから設置されている頑丈な鉄
あとは、衝突なく解放党員を降伏させることができれば最上である。
だが――。
「……ニセモノだ」
群集のざわめきの中で、その言葉がひとつ呟かれたのを、明良の耳は聴き取った。
(マズい……!)
「……そうだ。あの男は、黒頭様じゃないんじゃないか?」
「私たち、騙されたってこと……?」
疑念が、一挙に橋上に拡がっていく――。
「
「名づけ術師……、邪悪な魔名を強制する、邪神の手先……」
「
異端の信仰者たちの、クメン師へ詰める勢いは攻撃的な色を帯び始めた。
(……クッ! やはり、こうなったか!)
明良は周りに気付かれぬよう、
「皆さん! 投降するなら、その場に……」
「このニセモノめ!」
ひときわ大きな
クメン師に向かって真っすぐに飛び来る、炎の矢――「カ行・
いち早く気付いた明良は、自身も
すかさず、明良は橋の中ほど、平手をこちらに向けている男の姿を冷徹に見下げる。
「……今、放ったのは貴様か?」
続けてゆっくりと、新たな登場者に困惑している解放党員たちを見渡していく。眺めてみると、眼下の解放党員は若年の顔がほとんどのようだった――。
「……おとなしく投降する者はその場に伏せろ」
少年は「幾旅金」を「焔矢」の男に差し向けると、カチリと
「そうでない者、抵抗する者は……、相応の覚悟をしろ!」
向けられた
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