姿を消した名づけ師とネコの遺物 1
サガンカの「来客用の
昨日、「
「ちょっと! この……ネコ? とりあえず、この子が、昨夜お会いになったのが最後かもしれない!」
サタナ兄妹の母からの報告に、その場の全員に取り囲まれる美名とクミ。
小さなクミは、大人たちに簡単に自己紹介――「
美名の「名づけ」を頼みに行ったこと。
クメン師は快諾してくれたこと。
トジロ師
「うん……。夕食のあとだろうから、それが最後だろうな……」
「……どうしちゃったのかしらねえ。『名づけ師』様は気まぐれな方が多いけど、あの方はシャンとしてて、ふらっといなくなるようには見えなかったけどねえ……」
(それは、うん……。私も同感……)
「まさか……『名づけ師』様の身に、何かあったんじゃないだろうな……」
ひとりの男が呟くと、場の空気が一変した。
(ゲ……。このカンジって……まさか……)
場の大人たちは皆、程度の差はあれど、美名とクミとを盗み見るような気配になったのだ。
(うひゃぁ……。疑われてるよ、これは……。ま、不審者といえば不審者ではあるんだけども……)
最初に呟いた男が、もったいぶるように「あんたたち」と声を出す。
「……美名さんとクミさんは昨夜、どこにいたんだ?」
「どこって……クミが戻ってきてからはずっと、『児童窟』におりました」
「……ずっと?」
「はい」
(これはもう、『アリバイ確認』だよ……。まさか居坂に来て、ミステリーな現場に巻き込まれるとは……)
場違いな感慨に
(なにか……、何か、私たちの疑いを晴らさないと……)
そこで、クミは気が付いた。
「ン?」
彼女の小さな鼻孔をくすぐる、異質な臭い――。
洞穴の湿っぽさや、朝の澄んだ空気の匂いでもない、鼻奥をむずがゆくさせる、香り。
「これは……?」
クミは鼻を鳴らしながら、その元を辿るように「穴室」の室内に向かっていく。
小さなアヤカムのそんな様子に気付いた一同も、黙って彼女を見守る。
「ここね……」
「……クミ?」
クミが足を止めたのは、「来客用穴室」の扉を開けてすぐのところ、足拭き用の小さな
そこから――正確には、その裏からネコの鼻に臭う、
「クミ、どうかしたの?」
「……んなろぉ!」
可笑しな掛け声とともに、クミはその絨毯を裏返した。
その裏地を認めた一同は、あっと息を呑む。
「なにこれ……」
絨毯の灰色がかった裏地面には、
「もしや、『オ様』の……血?」
「多分ね……」
「こんな物が判ったってことは、やっぱり、君たちが『オ様』を……」
「ええ?!」と小さなクミは、目を丸くした。
「そうくる? 私、完全に探偵役な動きだったでしょ?!」
「タンテー……?」
「あ、うん……。探偵は
クミはふたたび、絨毯の裏地に目を戻す。
「……単にケガしたってわけじゃあ、ないでしょうね。血が
「……結構な量だわ。クメン様、大丈夫かしら……」
心配の声を上げる美名に、目を向けるクミ。
(クメン様、無事でいてほしい。無事でいて、この
「……美名、ダイジョブよ。クメン様が今、どこにいるか知る方法はあるわ……」
「クメン様の居場所を知る方法……?」
「これよ……」
そう言うと、小さな黒毛のアヤカムは、自身の首元に
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