転呼者と復讐者 2
「タ行・
詠唱直後には、庭園のどこから現れたのか、おそろしい数の昆虫の群れが大きなうねりとなって黒髪の少年に襲い掛かっていく――。
「……こんな
振り回された「
「カ行・
明良の頭上に、十数個にものぼる
いずれの先端も鋭利に光り、その刃は少年に集中した。
「……こんなものは、ヒミの
――たったふた振り。
それだけで、明良は十数個の氷の刃をすべて迎撃した。
「くっ?! カ行・
突如、強風に吹かれたがごとく、庭園の土砂が舞い上がる。
渦を巻き、天に上り、
庭園の花々を根元から引きはがし、荒々しく裂き散らす、暴虐。
石が飛び、砂が舞い、花が散り、風が襲う。
その最たる標的、嵐の中心に据えるは当然、大師の敵、黒髪の少年――。
「出直して、
渦中にあって、明良の両脚は地についていた。
白刃をこれでもかと振るい、汗水撒き散らし、光の玉の中で、耐え忍いでいた。
「虚勢ばかりかぁッ!!」
頬の傷から紅い血を噴き出させながら、大師が叫ぶ。
続けざまに、魔名術の様々を放っていく。
確かに、虚勢であった。
転呼の大師が放つ、劫奪で奪った魔名術は、どれも破るに
だが真実、明良と「幾旅金」は
「石動」を。「氷」を。「炎」を。「
少年が「幾旅金」を振る度に、彼の剣技はおそろしく深まっていくのだ。
「どれもこれも、
「ならば消え去れッ! ハ行・
「ッ?!」
「
大師の手である。
地に這うように、「
直後、明良の姿はこの場から消失した。
「……ふぅ……ふぅ……」
肩で大きく息
「……『
「ッ?!」
どこぞとも知れぬところからの声に、大師は目を剥いて顔を上げた。
正面の視界が、裂けていく――。
「貴様の『
剣閃が飛び、シアラ大師の肩口はスッパリと切れ、
シアラ大師は恐怖した。
目の前の少年の姿に、かつてない畏怖を抱いた――。
(……いや!)
心中で強く否定した大師の瞳に、
(この程度の絶望、あの時と比べれば……。私の道は……、私の旅路は……)
「こんなところで
大師が両の手を振ると、彼の
明良は刀を握り、身構える。
直後、その闇の
「ッ?!」
「何処か」から姿を現したのは、筋骨たくましい
しかし、体躯たちには、あるべき箇所に、あるべき部位がない。
その姿を認めた少年は、怒りに総毛立った。
「シアラぁあアァあぁッ!!」
「何処か」から現れ出でたのは、動力大師と、その弟子との――首のない身体であった。
両者とも、首元に血の
ギアガン大師の身体は、片腕さえも失っていた。
「この
「
ホ・シアラは、高らかに笑った。
「斬り刻めッ!
少年には為せなかった。
彼らの身体に「幾旅金」を突き立てることが。
彼らの哀しい姿を、自らの手でより
そうしてわなわなと震えている間に、明良はふたりの冷たい手に掴まれ、容易に組み伏せられた。
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