希畔の有力者たちと眼鏡の去来大師 4
「アキラさん」
緊急議会の広間を退室後、長廊下を進んでいた
数歩ほど後ろには、白外套の
「
(いつの間に……。退室の音も、近づく足音も、気配もなかったぞ?)
目を
「……驚かせて申し訳ない。ヒト嫌いが高じて、自分の気配が振り
「ヒト嫌い……の割には、
明良は顔だけ振り向いた体勢のまま、嫌味のように言った。
去来の大師は可笑しそうにしながら、明良の正面にゆっくりと回り込んでくる。
「ご覧のとおり、読書が趣味でしてね。
「……いや、読書好きとは一見して判らないが……」
長躯のシアラ大師は、どこか誇らしげでもある様子で自身の眼鏡の側部――「
「失礼。書物の読み過ぎは視力を悪くする……は、迷信でした」
「……『視力強化』は受けていないのか? 大師ほどのヒトが」
「『
明良はもう一度、チラリと背後を振り向いた。
定感覚で
「……アキラさんの提言通り、『
「今の俺の所作の動機を読んだか……。『
「だとしたら、それも読書の効でしょう」
明良は大師に向き直って、「何か用か?」と訊いた。
「……小僧ひとりに構うほど、『
「……言いませんでしたか?
去来大師は微笑みのまま、少し首を傾ける。
ふわり、と赤茶の長髪が揺れた。
「アキラさんは、『
黒髪の少年は目を丸くする。
大師が不意に放ってきた矢に、汗が伝った。
「……私がナフピンさんの紹介をした際、アキラさんの様子が変化しました。その
「……大師はやはり、『
「妙に
読書好きの大師は、廊下の窓際に歩み寄る。
窓越しの夜空には、「重ね月」の日のあとの、ふたつの月が仲良く並んでいる景色が浮かんでいた。
「よければ、事情を伺えませんか」
「……」
「アキラさんには『物語』の気配が漂う。ギアガンさんのことより、私個人としては、そちらの方に気が向いてしまいまして。お話し頂けたなら、『大師』として、何かお役に立てることもあるかもしれません」
(……まさか、「
明良は、自身が美名たちにやった忠告を思い出す。
「魔名教には気を付けろ」――。
ひとりめの大師、コ・ギアガンとの縁故は「敵対」だった。
そして、目の前の線の細いふたりめの大師は、「食わせ者」の気配がする。
「タ行使役」でも「ワ行
「話してくださる気にはなれませんか」
押し黙る黒髪の少年に、窓際の去来大師は
その
「明後日は何か予定はありますか?」
「明後日……?」
突然の話題の急転に、明良は戸惑う。
その質問の意図が測りかねるまま、少年は「ない」と答えた。
「でしたら、魔名教説話会に参加してみませんか?」
「説話会……。俺が、教会のお説教にか?」
「明後日は週に一度の説話集会の日です。動力大師の件がこのまま
事情を聞いてもなお、明良には去来大師の意図が測りかねる。
「ただの気晴らしや、旅路の道草とでも、気軽に考えていただければ」
明良は少し
この「縁故」を利用して、ひとつ思いついたのだ。
(「使役者」が
少年は、長躯の眼鏡の相手を見る。
明良の
(このところは、色々ありすぎる。言う通り、気晴らしにはいいのかもな……)
明良の中で少しだけ、シアラ大師への印象が
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