最新版輩魔名録と智の町の変事 2
閲覧室に入ると、
当然に、まずは
輩魔名録とは「名づけ」の実績に基づいて魔名教会が
加えて、「
そんな、
だが明良には、彼女が知らない、目を通すべき理由がある。
(
明良が
そのうち三人は、住所も含めて
しかし、いずれの住所も「希畔」の町には程遠く、大陸さえも違う者がふたりにも及ぶ。
(やはり、『魔名教会員』に……、俺が確認できない「教会員」魔名録に、「使役者」の名はあるのか……?)
明良が受付員に呆れられるほどに輩魔名録を見返し続けるのは――彼の魔名と記憶を奪っていった「
(この町に……、この「
明良は思い起こす。
今や遠く、小さなクミの首元に
長い間、彼の首飾りとして光り続けていた、
彼は、洞蜥蜴の鱗を収めた「
だが、彼の追跡はそこで頓挫した。
(この町は、「ハ行
明良は魔名録の隣で広げた、「
そこには手描きの「指針釦」の挿絵とともに、その遺物の情報が記されている。
【円形の金属装飾型の遺物。開閉が可能であり、内部に生物の一部を収納すると、前面の針の指針方位と発光色彩とで対象の現在位置を示す。対象生物までの遠近は青から赤の発光色で表され、対象生物への方位は針先が示す。ただし、対象が死亡している場合は発光は海よりも深い青のまま、針は回転を続ける。タイト大戦時に所在不明となる】
明良も「
だがそれでも、明良が所有している間、「指針釦」はこの記載にない振る舞いをしていたのだ。
(光の色は変化するが、針は回り続ける……。これが意味するところが判れば、「使役者」に近づくこともできるだろうに……)
明良が追跡の旅を開始した直後から、「指針釦」はこのような不可思議な動きをしていたのだ。
「洞蜥蜴は死んではいない」が、「どの方角にいるのか判然としない」。
クルクルと回り続ける針先はまったくアテにならず、色味の変化だけが頼りの手探りの旅であったため、この「希畔」に辿り着くのにもかなりの時間を要した。
それでもやっと、針の赤色が極まった地がこの「智集館」なのであった。
だが、洞蜥蜴の所在――ひいてはそれを従える「使役者」の所在は、おそらくこの「智集館」なのであろう、というところで、針の発光色は変化しなくなった。
「指針釦」の本来の機能としては、針先が指し示すことにより完全に対象に接近できるはずである。しかし、針は依然として、回り続けるばかりだった。
(地道な追跡も
三週ほど前、つと明良が目を落とすと、針が一点を指し示し、青色に光っていた。
明良は急いだ。
早馬を駆って、山を越え、野を走った。針に導かれて。
移動するごとに「指針釦」は色味を変えていく。
そうして明良が辿り着いたのは、クシャだった。
その瞳に認めたのは、洞蜥蜴の息吹吹き荒れる惨状だった。
「指針釦」は正しかったのだ。
(洞蜥蜴の出現時、俺と美名とクミとがヤツと対峙していた時、周囲には「まともに立っていた」ヒトはいなかった。ヤツを退治できたあとに観て回ったが、クシャの村の雪の上、俺たち以外のマトモな足跡はなかった。「使役者」はあの場にいなかった。遠隔での使役であったのかもしれない。だが――)
明良は拳を握り、唇を噛み締めた。
(「使役者」が、この町を……「智集館」を拠り所としていたのは、間違いない。次に俺が当たるべきなのは、俺と同じ時機にこの「智集館」を去った者。あるいは離れていて戻って来た者……。そいつが「使役者」だ)
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