最新版輩魔名録と智の町の変事 1
「……なんだか判らないけど、少年の『
「……承知の上だ」
少し不機嫌そうに顔を背けた明良の前に、受付員は四冊の冊子と紙片を差し出した。
「それじゃあ、見たいの選んでね」
差し出されたこの冊子群は、
この目録に記されているのは書物名、非常に簡素な概要、管理用の
だが、明良はその分厚い目録のひとつをも開くことなく、紙片に筆を走らせ出す。
「……
「……またぁ?」
担当員は顔をしかめて呆れる。
「魔名録ばかりにそんなに執心してるヒト、少年……明良くんだけだよ? 飽きないの?」
「……飽きないな」
「うすうす思ってたケド、変な
「
突き放すように明良が言うと、担当員は肩をすくめる。
そうして目録を自らの手元に引き寄せると、
明良は
パラパラと手慣れた様子で目的の
「明良くんが来てない間に魔名録、最新版になってるよ」
「本当か?!」
「お、勢いづいた。……最新とはいっても例の通り、二年ほど前のだけどね」
「……充分だ。これまでは七年も前の内容だったんだからな……」
「……ホント、おかしな子ね。あ、メンリンさん、これお願いします」
ふたつの管理番号を書きつけた紙片を同僚に渡した担当員は、すぐさま明良に向き直って、面白がっているような目をくれる。
「ねえねえ、『ネコ』さんって、どんな子なの?」
「どんなって……?」
「そういうハナシに飢えとるのよ、
明良は「特徴?」と少し首を傾げて、小さなネコの姿を思い浮かべる。
「……そうだな。体毛に
「た、体毛……? 体毛って……アンタ……」
「あと、撫でるとスゴい喜ぶ」
「撫でるって……。頭とか、手の甲だよね? ねえ?」
「いや、全身どこでも」
「ぜ、全身……」
「アレは自制してるつもりらしいが、俺には判る。アイツは喜んでた」
「……少しの間に遠いトコロに行ってしまったね、少年……。『
担当員が
二冊の分厚い本と
「そんじゃね、ごゆっくりぃ……」
「相変わらず、
書物を抱えて遠ざかりつつあったところ、明良はつと振り返った。
担当員は台板に
「おい」
「……ン? 本、違ってた?」
「いや、そうじゃなくて……。『ゴゴの冒険記』ってあったろう?」
少し考えた様子のあと、担当員は「ああ」と思い当たった。
「あの、子供向けの
「そうだ」
「それがどうかしたの?」
明良は含み笑いを返す。
「内容の精確な検証を
黒髪の少年は笑みを残して、閲覧の室へと歩み去っていく。
「だからその、持って回った言い方をやめなさいっての……」
担当員は少年の背中に届けとばかりにため息を吐いた。
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