新たな輩の子と名づけ術師 6
木々が次々に
「す、スゴいな!」
「ふふん。これが美名です」
瞬きする度に拓けていく視界に、感嘆の声をあげる養蜂家リントウ。
その傍らで、得意気になる小さなクミ。
「
美名とクミは頂いた昼食のお返しとして、
「この調子なら今日中に伐採は終えてしまうなぁ」
「ふふん。これが『
「手伝い」といっても、クミがしていることと言えば、美名の尻馬に乗って得意気になっているだけである。
「おぅい。休憩にしよう」
「はぁい!」
美名が
「『
「休憩を終えたら、
「ふふん。働き者の美名です」
「クミはちょっとでもいいから、枝取りのお手伝いしてね」
「ふふん……、うん。そうする……」
クミのしぼむ様子を笑い飛ばしたリントウは、美名に顔を向ける。
「『名づけ師』様を追いたかったんだろうに、かえって悪かったね」
いえ、と首を振り、えくぼを作る美名。
「またクシャに顔を出さなければいけませんでしたから、どちらにしろ、この近辺をすぐに発つ気はありませんでした」
「そうか。そう言ってくれるなら僕も気が休まるというものだ。『名づけ師』様は、『ヘヤに向かう』と仰っていた。クシャでの用が済んだら後を追うといいよ」
「はい」
「『ヘヤ』は港町ってクシャの村長も言ってたわね。いいところなの?」
「古くから海運で栄えてきた都市国家で、この地方ではいちばん大きな町だよ」
「私も一度、先生と訪ねたことがあるけど、海の眺望が綺麗で、素敵なところだったよ。お魚が美味しいしね」
「魚かぁ、いいねぇ……。
「あの、リントウさん……」
美名が顔色を窺うように養蜂家に声をかける。
「こちらにいらっしゃった『オ様』ってどんな方でした……?」
「『名づけ師』様かい……?」
「そうです、そうです!」
美名は目を輝かせると、リントウに迫るように訊く。
彼女の好奇の勢いに養蜂家はたじろいでしまう。
「『
「い、いやぁ……。トジロ様……と仰っていたかな……」
「あぁ!」と組み手で天を仰ぐ美名。まるで心を空に飛ばしているようである。
「『放浪のトジロ』様! 山深くの人里、海隔たりの島町! そんな土地に忽然と現れ、魔名を授けていく
美名の恍惚として感極まるといった様子に、呆気にとられるクミとリントウ。
「美名……。アンタ、『オ様』のおっかけみたいなのね……」
「うん……。え? 『おっかけ』ってなに?」
ひとしきり笑ったあと、三人は養蜂用地の開拓作業を再開した。
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