第44話 潮騒ダンジョン⑤

「はぁ、はぁ、これで……、最後ね」

「こっちも、これで最後のはずだ」

 猪貝がぜぇぜぇと息を切らして最後の一個を俺に手渡してくれた。そしてそれを今までに回収したステボの山の頂上にのっける。かなりの量のステボのピラミッドは俺の腰よりも少しくらい高く積まれていて、圧巻と言えば圧巻だった。


「数えんのめんどくさいけど、大体50行くか行かないくらいか?」

「これだけあるとどんなスキルが手に入るのかワクワクするんじゃない?」

「確かに……、こんなに使ったことないからな」

「でもこんな量消費するの大変なんじゃ……」


 そうか、猪貝の前ではまだシスさんを使っていなかったんだっけな。


「ひさしぶりにシスさん召喚っ」

《はい、お呼びでしょうか?》

 久しぶり聞くシスさんの声が、脳内に直接届く。機械音にも似た独特の声のくせに変な抑揚をつけているせいか、一種の不協和音のような音になっており気持ちがわるい。

「ちょっ。なんかしゃべり方へんじゃね? 前こんなんじゃなかったでしょ?」

《最近話していただけなかったので話し方を忘れて今いました》

 システムのくせに恨み節のような、ひねくれたようなことを言ってくる。こいつ本当に単なるシステムなのか?

「ごめんごめん。ちゃんと話すようにするからさ」

《べ、別に拗ねてなんかないんですからねっ》


「なんでツンデレ調なんだよ。いきなりぶっこんでくんなよ」

《まぁ、冗談は置いといて何をいたしますか?》

「いや、切り替えの良さっ。なんだそれ」


 ツッコミを入れた後、キリがないので本題に移った。

「ここにあるステボを全部消費したいんだけど」

《わかりました》

 

 シスさんがこういったかと思うと、一瞬にして目の前のステボの山が光り、消えた。

《ステータスボールの消費を確認。ステータスをご確認ください》

「ステータスオープンっと」


―――――――――――――――――――――――

ステータス


田中秀明

レベル    : 1

HP     : 1755/1755

MP     : 5500/6025

SP     : 0

スピード   : 4990

攻撃力    : 595

防御力    : 595

ラック    : 35


―――――――――――――――――――――――


――――――――――――

固有スキル

【ドロップ】

所有スキル

【分裂】Lv.100、【ヌルヌル】Lv.7、【風魔法】Lv.2、【岩魔法】Lv.3、【跳躍強化】Lv.1、【脚力強化】Lv.2、【炎魔法】Lv.2、【反響定位】Lv.10、【回復阻害】Lv.1

――――――――――――


「やっべぇ、すごいステータス上がってる。なんだこれ……」

「ねぇ、ねぇ。スキルはっ? スキルはどうなったのよっ」


 猪貝は俺のステータスを確認できないから気になって仕方がないのだろう。めちゃくちゃ急かしてくる。


「スキルのほうも、やばそうな感じのが増えてるぞ」


――――――――

 反響定位


 モノやダンジョンの構造などを把握できるようになる。スキルレベルによって把握できる範囲が異なり、レベルが上がれば上がるほど範囲も広くなる。察知の上位互換と言われるスキル。


――――――――


――――――――


回復阻害


 文字通り、対象者の回復を阻害するスキル。阻害の度合いはスキルレベルに比例し、持続時間は消費MPに比例する。基本的にはモンスター側しか持たないスキルで人間が入手するすべはない(まだ知られていないだけかもしれないが)。


――――――――


「すごいじゃない。特にこの【反響定位】ってのが今後役に立ちそうね」

「しかもレベル10だから結構な範囲を見ることができるはず」

 ダンジョンの全貌を把握できるようになったら今後のダンジョン探索がかなり楽になるだろう。


「あっ、そうだ。シスさん。もしかして、ステの増加分からミズコウモリのステータス出してもらうことってできる?」

《それくらいならできますよ。このように》


シスさんがそう返答するとすぐに

――――――――――――


ミズコウモリ


HP     :10/10

MP     : 100/100

SP     : 0

スピード   : 50

攻撃力    : 1

防御力    : 1

ラック    : 0


―――――――――――

と出してくれた。

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