第41話 潮騒ダンジョン②

 ダンジョンを進んでいくと、もうお決まりのスライムたちが現れる。


「そろそろ、お前らを倒さなくてもいいんだけど、どんなスキルが入るかわかんないし………、ごめん」


 炎魔法を使っている左手は、解除すると暗くなってしまうので、右手のみで剣を持ち、スライムを斬りつける。さすがに剣を片手で持つと重たく、武器を変えたばっかで慣れていないために、ふらふらとしてしまったが、何とかスライムにあてることはできた。

 ここまで来るとちょこんと当てるだけで倒せるようになるから非常に楽になった。

 例の如く10匹ほどのスライムを倒し、すべてきちんとドロップしたため10個のステボを回収することができた。

 

「うっし。計10匹分のステボを消費するかーー」


―――――――――――――――――――――――

ステータス


田中秀明

レベル    : 1

HP     : 1255/1255

MP     : 1000/1025

SP     : 0

スピード   : 2490

攻撃力    : 545

防御力    : 545

ラック    : 35


―――――――――――――――――――――――


――――――――――――

固有スキル

【ドロップ】

所有スキル

【分裂】Lv.100、【ヌルヌル】Lv.7、【風魔法】Lv.2、【岩魔法】Lv.3、【跳躍強化】Lv.1、【脚力強化】Lv.2、【炎魔法】Lv.2

――――――――――――


「うーん。ここのスライムは他の場所のスライムと違いなしか? もしくは俺が運悪かっただけなのか?」

 ステータスの上昇のみでスキルに変化はなかった。

 もう少し倒して確かめたかったが、これ以上スライムがいるようには思えなかったし、試しに猪貝に【察知】を使ってもらったところ反応なしだったのであきらめることにした。


◎ ◎ ◎ ◎ 


 このダンジョンが何階層まであるのかわからないが今のところ三階層目まで来てるはずだ。三階層目まではなんと最初に出会ったスライム以外にモンスターには出くわさなかった。運がいいと言えばいいのだが、新たなスキルを手に入れるチャンスがなかったというと少し残念

な気がした。


「そー言えば、私気になってたんだけど、あんたの【炎魔法】って強弱をどうやって調整してるの?」

「言われてみれば確かに……、どうやってんだろ?」

「知らないで使ってたの??」

「いやイメージとしては使い分けできてるんだけど、原理は? っていきなり聞かれると答えられないもんだよ」

「で、そのイメージって?」

「炎を出したい部分に念を入れて炎魔法を唱えるんだけど、その時の出す場所で強弱を決めてたっぽい。指先なら弱、手のひらなら中、両手で大みたいな」

「それができるんだったら、強弱の調整ができそうだけど……」

「じゃぁ、やってみる?」

 俺は左手の炎を解除する。すると一気にあたりが真っ暗になり、猪貝の顔を確認することすらできなくなった。

「【炎魔法】ッ」

 頭の中で最初に指先に出したあの小さな炎を思い浮かべてみる。すると、手のひらに優しく、小さな炎が生じる。少しの風が吹くだけでゆらゆらと揺れる


 次に、大きな炎をイメージする。天井に到達するほどの何もかもを燃やし尽くしてしまうようなそんな炎を。すると、イメージしたほどの炎ではないにせよ、明かりにするにはあまりにも強すぎる炎が生じた。


「やりゃあ、できるもんだね」

 正直ここまでできると思っていなかったから驚いた。でも、イメージとしては【ヌルヌル】を使うときに類似していたからできたのかもしれない。


「すごいじゃんっ。火の調整ができれば、これで――」

「これで?」

「料理ができるっ」

 猪貝が目をキラキラさせてこちらを見てくる。この前ので料理にはまったのだろうか?


「おれはガスコンロかっ」

  

 俺がツッコミを入れると猪貝は人差し指のみを上げて左右に揺らす。

「チッ、チッ、チ。それだけじゃないよ」

「な、なんだよ?」

 なぜかきめ顔をしているから、もっとすごい何かを提案してくるのだろうか?

 

 謎に一旦間をおいてから、

「バーナーにもなるわよ」

「おいっ、俺は便利な道具じゃねぇんだぞ」


 こんなあほなやり取りをしながらダンジョンを下へと進んでいく。

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