第30話 再挑戦⑤
「せっかくスキルも手に入ったことだし……、ダンガンラビットと戦ってみる?」
「もちろんっ」
ただ、先ほどの戦いでこの階にいるダンガンラビットはいなくなってしまったらしいので下の階へと進んだ。
下の階へと降りてから、ダンガンラビットを見つけるまでには思ったよりも時間がかかった。そしてそれなりの距離を歩いてやっと3匹のダンガンラビットと遭遇した。
ただ、最初から複数のダンガンラビットと戦うのは困難だから、一匹を残してそれ以外を俺が倒す。
「じゃ、後は頼んだ。ただ、アドバイスがあるとしたら、目を使うんじゃなくてタイミングをとるってことぐらいかな」
先ほどの意気込みとは裏腹に、微妙に手が震え怖がる様子を見せる猪貝。
「タイミング……、タイミング……」
確かめるように、もしくはダンガンラビットと初めて一人で戦うことに対する恐れを減少させるかのように俺の言った言葉を何度も何度も復唱する猪貝。
だが、そんなことをしている間にも猪貝と向かい合っているダンガンラビットは攻撃する準備を進めていた。
「来るぞっ。気をつけろっ」
俺がそう叫んだのも束の間、ダンガンラビットは跳躍し猪貝のもとへと一直線に向かっていく。
ただ、猪貝はまだ戦う体勢に入れていないのか、短剣を構えてすらいない。
「とりあえず、【
「--ッ、【
間一髪のところで猪貝はスキルを唱えることができ、ダメージを食らわずに済んだ。が、攻撃を終えて元の場所に戻ったダンガンラビットのほうはすでに脚に力を籠め二発目の準備をしている。
猪貝はいったい何を怖気づいてるんだ? そんな調子だと倒せるものも倒せないぞ。
どうにかしないと、と思った俺が思いついた策は一つだけだった。
「何をボケッとしてるんだ? やるってさっきまで言ってたのにあの気概はどこに行ったんだ? 口だけか?」
発破をかけるようにあえて強い口調で挑発し、猪貝の気持ちを奮い立たせることだ。ただ、そんな単純に行くかな? と思っていたのだが、案外ちょろかったようで、
「そんなことないッ。私だってやるときはやるわっ。だから――、見てて」
すると腰から短剣を取り出し、構える猪貝。今度はさっきまでの自信のない表情ではなく、今までのように謎に自信にあふれていた時の快活な表情になっていた。
「ポイントはタイミング。さっきので、踏み出しから到達までのタイミングはなんとなくわかった。あとはダメージをどれだけ与えられるかが重要になってくるわね」
そうだ。ダンガンラビットの攻撃は単調で、必ず頭めがけて攻撃してくるし、同じ速度での攻撃だから、タイミングさえわかれば攻撃を当てることはできる。ただ、ダメージ量に関しては、猪貝の攻撃力だと一撃で倒すことは難しい。
「でも、どんなモンスターにも急所っていうのがあるはずだわ。そしたらそこを狙えば行けるんじゃないかしら」
ランクの低いダンジョンならばボスモンスターを除けば、ほとんどのモンスターに急所は存在する。今回のダンガンラビットに関していえば、白い体毛の中で、胸のあたりにポツンと存在する黒い毛の部分が急所になる(というか、そこに心臓がある)。
「と、いうわけで、私の作戦は決まったわ。いつでもかかってきなさいっ」
ダンガンラビットは猪貝の頭に向かって飛び跳ねる。
猪貝は短剣を頭の上まで振り上げた状態でダンガンラビットを迎え撃とうとしている。
「まだ……、まだ……、今っ」
猪貝はこう叫んだと同時に、振り上げていた短剣を両手で持ち、思いっきり振り下ろす。
短剣はダンガンラビットの頭にダメージを与えるも、絶命させるまでには至らなかった。だが、ダンガンラビットの態勢を崩すことには成功した。
「多分、ここでしょっ。急所は」
短剣を持ち替え、ダメージを食らって体勢を崩したダンガンラビットの急所のあたりを攻撃する。
すると、運よく急所に当たったらしくダンガンラビットは絶命した。
「倒したわッ。だから言ったじゃないの私ならできるってね」
「へぇへぇ、そりゃよかったな」
「むぅッー。なによその顔馬鹿にしてんの?」
とりあえず、アイテムを採取して、俺が倒した分のステボを消費した。
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ステータス
田中秀明
レベル : 1
HP : 325/325
MP : 135/135
SP : 0
スピード : 380
攻撃力 : 305
防御力 : 305
ラック : 12
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固有スキル
【ドロップ】
所有スキル
【分裂】Lv.100、【ヌルヌル】Lv.7、【風魔法】Lv.2、【岩魔法】Lv.3、【跳躍強化】Lv.1
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