第29話  再挑戦④

「せっかくスキルポイントもたまったことだし、何かスキルを手に入れといた方がいいな」

 とはいえ、俺は今までスキルポイントとは無縁の生活を送っていたせいでどのようなスキルを手に入れることができるのかというのを全く持って知らない。


「猪貝はどんな探索者になりたいんだ? それによって強化するものっていうのは違うと思うんだが?」

 

 これは前のパーティにいたときにうっすら聞いた話になる。普通のパーティだったら、例えば個人の得意なものをひたすらに伸ばして、お互いに足りない部分を補完しあうチームだったり、もしくは全員がいろいろなタイプのスキルを入手するバランス型のチームなど、そのチームの方針によって入手するスキルは変わるらしい。

 現に前のパーティにいたときには、黒田が攻撃系スキル、成上が補助系スキル、磐田が防御系スキルを伸ばす形で役割のためのスキル入手をしていた。

 ただ、今の俺と猪貝のパーティには役割なんて存在しないし、俺に関していえば得られるスキルの自由度が通常の場合よりかは低く(どのモンスターからどんなスキルが手に入るかは謎)どんなパーティにしようという目論見はないから、猪貝にはやりたいことができるようなスキルを入手してもらいたい。


「私は……、守ってもらうだけじゃなくて一緒に戦いたい。見てるだけっていうのは嫌なのっ」


 熱意のこもった言葉、その勢いに思わず圧倒されそうになる。

それだけの熱意があるならばそれをかなえてあげなければいけない。だから俺はできる限りのアドバイスを送ることにした。


「だとしたら……防御系のスキルを手に入れた方がいいな」

「なんで? 攻撃系のスキルじゃないの?」

「違う。ダンジョンでは生きることが最も重要で攻撃力なんて二の次なんだ。どれだけモンスターに勝ち続けていたとしても一回の大きな敗北、つまり死でおじゃんになることがある。一方で勝たなくても死ななければ何度だってチャンスは生まれる。つまり勝つことよりも負けないことのほうが重要なんだ」

 

 ダンジョンではどんなモンスターが出てくるかわからないダンジョンだって存在する。今潜ってるダンジョンは比較的ランクが低いからどんなモンスターが出てくるかの情報は容易に手に入るが、高ランクになるとそうはいかないのが現状だ。

 だからこそ、逃げることと守ることという負けないための能力が猪貝の望む探索者像にはもっとも必要だと考えている。


「だとしたら、私が今取れそうなのは……【魔空壁ガード】と【脚力強化】かしら」

「【魔空壁ガード】って何?」

 俺はスキルポイントで手に入るスキルをほとんど知らないため魔空壁というスキル名をはじめて聞いた。

 スキルポイントで手に入るスキルのほとんどは先人が入手しているために効果などがほとんど判明しており、丁寧に一覧まで作られている。


――――――――――

魔空壁ガード


MPを消費することで、好きなところに透明な壁を生成することができるようになるスキル。

作れる壁の大きさの限度はスキルレベルに依存する。スキルレベル1であれば半径20センチほどで、スキルレベルがマックスまで行けば半径2メートルほどまでになる。

壁の大きさは使用したMP量に比例して、大きさが変わる。

耐久力は、攻撃をちょうど一回防ぐくらい。

ただ、壁の生成量には限度があり同じタイミングに複数枚生成することは不可能(つまり一枚)

―――――――――


――――――――――

【脚力増加】


MPを消費することで、スピードを一時的に上げるスキル。

スピードの上昇幅はスキルレベル、持続時間は消費MPに比例して伸びる


―――――――――


「じゃぁ、私はこの二つのスキルを入手することにしたわ」


 こうして猪貝は新たなスキルを二つ取得したのだった。

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