第23話 久しぶりの
階層を下に降りるにつれて気温が上昇していくのがこのダンジョンの特徴だ。
そのせいで最下層まで来るとかなりの温度に達し、俺の万能なヌルヌルを持ってしても熱を感じるまでになっていた。
どれほどの暑さなのか気になってヌルヌルを解除してみるとあまりの熱気に全身に穴が開いたんじゃないかとまで錯覚するぐらい汗が噴き出てきた。
これはやばいと水分補給をするもののそのまま汗として出てきてるんじゃないかと錯覚するくらいに汗がでる。嗅覚は暑さにやられて働くのをやめ、ダンジョン内特有の土の香りを感じることができなくなっていた。
あまりの環境のきつさにうっすら目眩を感じ、脳みそがとろけているようにさえ思われた。
さすがにそのままだと命の危険があると思い、すぐにヌルヌルを唱えなおす。
「これでEランクのダンジョンとか……、Sランクダンジョンはどんだけやべーーんだよ」
頭の中でAからEまでを順に数えてみるとそれなりの数があり、しかもSランクはAランクの上なのだからはるかに絶望的なランク設定のように感じられる。
「愚痴を言ってないで今は目の前のことにだけ取り組む。そうでしょ?」
猪貝はそういいながら、愚痴を漏らす俺の背中をバシーーンとたたく。
いきなり叩かれたことと、猪貝が珍しく真面目なことを言っているので二重の意味で驚く。
「確かにそうだな。今回は猪貝の言うとおりだ。愚痴ばっか言ってもなんにもなんねーもんな」
「今回はって何? 正しいのはいつもでしょ。い・つ・も」
「まぁ、冗談はそのくらいにしておいて……」
「冗談なんかじゃなーーい」
俺が軽くあしらったせいで猪貝はぷぅーーっとほっぺを膨らまして怒っている。
「まぁ、まぁ、怒るなって。ほら、そろそろサラマンダーたちがいる場所につくからさ」
俺は猪貝をなだめながら最下層を移動していく。なだめている間に猪貝も機嫌を直してくれた。
「そろそろサラマンダーがいるって言ったけど、何もいないじゃない。どこにいるのよ」
俺たちの目の前に広がるのは、一面赤い地面だ。所々にマグマのようなものが地面に顔を出してぼこぼこという音を奏でる。時々マグマが噴き出て周りの岩などにかかるとジュワァと溶かしているのを目にする。
本来ならサラマンダーはこの場所にいるはずなのだが一匹もいない。
「おっかしいなぁ。このあたりであってるはずなんだけどなぁ」
俺は調べることと、記憶することは得意だ。おかげでダンジョンの地図は頭の中に入ってるし、その精度には自信があるからここであるのは間違いないと断言できる。
「だれかすごい強い人が一人で全部倒しちゃったのかしら」
「いや、それはないんじゃないかな。一人ではさすがに……」
「なんで?」
「サラマンダーは単体で見ればEランク相当だけど、全部を相手にするってなるとかなりの強さが必要になるはず。で、それだけの強さがあるんだったら入場規制でひっかかっちゃうから一人で、というのは考えにくいと思うんだ」
「じゃぁ、あるとしたらEランク入れるぎりぎりの強さの探索者が何人かってことね」
「そーゆーこと」
さすがに全部を倒すなんてことはないだろう、と思ってあたりをもう一度確認してみるけども何もいない。
「とりあえず、先に進んでみる? 一応この奥もサラマンダーの生息地だし」
「そうね。インターバル待つのめんどくさいから残ってくれてるといいんだけど……」
さらに奥に向かおうとしたその瞬間、曲がり角に人影が写っているのを見つけた。その数は三つほど。
影が三つってことは三人か。
たった三人で倒したのか? 全てのサラマンダーたちを?
そんなことを考えている間に、その探索者は曲がり角を曲がってきた。
その瞬間、探索者と俺は衝突する。
「いててて」
突き飛ばされた俺はしりもちをつく、
その後体勢を戻し、顔を上げるとその探索者たちの顔を拝むことができた。
「おっ、お前らは……」
久しぶりに出会ったのは、俺を追放した黒田たちだった。
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