第20話 サラマンダンジョン
次のダンジョンはサラマンダンジョンだ。
ダンジョンの最下層である10階層にはファイアサラマンダーが生息している。ファイアサラマンダーは体長が50センチから大きくても1メートルちょいくらいの大きさで、見た目はほぼただのトカゲで体が赤い。ただ特徴的なのは炎魔法を使うってことと二足歩行で追っかけてくるってことだ。しかも二足歩行をするとなぜかスピードが上がる。意味が分からん。
そしてファイアサラマンダーは最下層にいるものの、ふつうのダンジョンと違って最下層に大量に生息し中には群れを成しているものもいる。これがまた厄介で、連携して攻撃されるとひとたまりもない。
そしてこのサラマンダンジョン。俺にとっては嫌ーーな思い出のある場所だ。
そう、俺がパーティから追い出された場所なのだ。
今回はダンジョンをクリアすることでその思い出をぶち壊すのと、俺の目論見通りいけばファイアサラマンダーのステボで炎魔法というかっこいい魔法を手に入れられるんじゃないかという考えでここのダンジョンを選んだ。
サラマンダンジョンは全体的に少し赤みがかった土で構成されているおかげで見た目からして暑そうに見える。で、実際にダンジョン内はかなり暑い。
本来なら暑いダンジョン用の装備を整えてくるべきなのだろうけど、金に余裕がないので装備や道具を買うのはあきらめた。前のパーティに属していた時は、成上が氷魔法を習得していたおかげで快適にダンジョンに潜ることができた(ただその直後に追い出されたから何とも言えないけども)。
ダンジョン内のあまりの暑さに息をするのも嫌になってくる。呼吸をするたびのどが焼けるような感覚に襲われるけども呼吸だけは止めることができないからその環境を受け入れざるを得ない。
「さすがに暑いな。魔法なしだと。ほんと溶けちゃいそうだ」
「そ、そうかもしれないわね。」
猪貝の何とも歯切れの悪い返答。何か隠してんのか?
「いや、暑いでしょ。こんなに暑いのに……っておい。ちゃんと装備揃えてんじゃねーか」
みれば猪貝は、このダンジョンに適した装備を新調し、快適そうにしていた。
「それ……、どうしたの?」
「ま、魔法のカードで」
あっ。その手があったか。とは思ったものの、よーく考えてみたら限度額いっぱい使ってたからどうしようもなかったんだった。
「ちょっと……貸してくんない? 半分だけでもいいからさ」
「はぁぁ? 何言ってんの? 女の子から奪おうとするとかやばくない?」
「俺は快適に生きるための最大限の努力をすることを情けないとは思わない。だから、貸してください。このとーーり」
両手をぱちんと合わせ頭を下げて頼むというポーズ。人生で何回やってきたのだろうか。そろそろ使いすぎて効果がなくなるんじゃないかと思ってはいるもののまだまだ使ってしまう。
「いや、最初カッコいい感じのこと言ってたのに最後ダサっっ。しかもそんなことやられたって貸さないわ。第一これは女性用の装備だし」
「別に俺は気にしないからさ。さぁ早く」
「あんたじゃなくて私が気にするのよっっ」
バチーーンと気持ちのいい一発が右頬に入る。久しぶりの一発。なんだか懐かしいような気もする(しない)。
しょうがないのでそのままサラマンダンジョンを進んでいくけどもさすがに暑いので対策を講じることにした。
「
俺は
「しょうがないこうなったらやけくそだッ。【ヌルヌル】ッ」
ビチャアっと両手からヌルヌルが飛び出る。
俺はそのヌルヌルを体中に塗ってみた。すると、体温がだんだんと下がっていくのを感じる。
「すげぇ、なんか快適になってきた気がする。もしかしてヌルヌルって遮熱効果と冷却効果まであんの? 最強じゃん」
俺は、俺の中の一番使いたくないランキング一位のヌルヌルの有能さに驚くばかりだった。
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