第10話 マホガラス
「マホガラス、やっぱりでっけぇな」
前回このダンジョンに潜る前にマホガラスのことを調べたから、ある程度の情報は頭に入っている。マホガラスの体の大きさは、2メートル程度。体は真っ黒で、暗闇に紛れ込まれると見つけにくくなるらしい。
マホガラスの攻撃方法は主に2つ。1つは風魔法による遠距離攻撃。2つ目は立派な黒いくちばしによる近距離攻撃だ。そしてメスの場合、ひな鳥が近くにいると気性が荒くなり攻撃力が上がるらしい。しかし運がいいことに今回はオスだった(尾が長いとオスらしい)。
まず一番最初に俺がしたことは、ダメージを負った先客が戦いに巻き込まれないように岩場の陰に隠すことだ。
次にマホガラスが俺を攻撃しても先客が巻き添えを食らわないように、その場所から遠い所へと移動した。
「おっし、これで気兼ねなく戦えるっ。」
するとすぐにマホガラスは翼を広げ、風魔法を使ってくる。
ビュゥゥゥ。
強い風が吹きつける。
「早速風魔法かよ。やべぇっ、これじゃ俺も吹っ飛ばされちまうっ」
急いで右側へと走り出す。マホガラスは、風魔法の攻撃範囲を狭めることで突風を呼び起こしている。だから、少し横によけるだけで攻撃範囲から逃れることができる。
「ふぅっ。スピードが上がってて助かった。風魔法を避けられることがわかれば怖いものはないっ」
こうして風魔法への対策はできた。だったら距離さえとりつつ攻撃ができれば安全に戦えるはずだ。だが俺には遠距離攻撃がない。唯一の武器である短剣を投げるという方法も考えられたが、一撃で仕留められないというリスクを考慮するとやるべきではない。
そんな感じで遠くからの様子見を継続していると、マホガラスは立派なくちばしで岩を砕き始める。
「なんだ? いきなりそんなもん壊して? やつあたりか?」
細かく砕かれた岩を前にして再び風魔法を使うマホガラス。
「だーからお前の風魔法は俺に効かねぇっての」
だが先ほどの風魔法による攻撃とは異なり、石のつぶてが広い範囲に飛び散る。
「そんな攻撃もあるのかよっ。やべぇ、避け切れないっ」
避けることをあきらめ両手をこの前でクロスし、守りのポーズをとる。
「いってぇ。さすがにダメージを食らってるな。少しだけど」
でもこんくらいの傷だったら、微々たるものだし無視しても構わない。最悪ヌルヌルを使えば治るし。
「お前の遠距離攻撃が効かないのはわかったから、ずっと距離をとり続けてMP使い切るのを待つってのもありだ。が、そろそろ先客を治療してあげないといけない。だからこれで終わらせてやるっ」
地面を蹴り、一気にマホガラスとの距離を詰める。マホガラスは風魔法を連発するが、先ほどの要領で避けマホガラスの前に到達する。すると風魔法をやめ、くちばしで思い切りつついてくる。その攻撃を、短剣で軌道をずらし避ける。そして、マホガラスの下へと潜り込む。
「ここなら、お得意のくちばし攻撃も……、できないだろ?」
短剣をマホガラスの腹部に思いっきり突き刺す。
「これじゃぁ、足りないだろうから――」
短剣から一度手を放し、両手に持ち替え、立ち上がる勢いを利用してさらに深く刺し込む。
「これでっ、どうだっ」
ギャィィィィ。
甲高い叫び声をあげるマホガラス。短剣が抜けないようさらに強く刺し、果てるのを待つ。
短剣に沿ってマホガラスの血が滑り、俺の顔にぽたぽたと垂れる。ただ、短剣が栓のようになっており大量の血がかかるということはなかった。
30秒ほどその状態で待つと、マホガラスはドサリと倒れる。俺は巻き込まれそうになるのをさっと避ける。
少し経つとマホガラスの体が光りはじめ、いつものように黒い球がドロップした。
「よっしゃぁーー。倒せたぞ。しかもステボも手に入ったーー」
俺はガッツポーズをとり叫ぶ。
「こんなことしてる場合じゃねぇ。早く助けてあげないと」
先客を助けなきゃいけないのを思い出し、すぐに移動した。
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