観察者



この仕事はアルバイトや、




パートでの雇いがほぼ多数を占める。






私の仕事は観察する事だ。






何となく求人雑誌を漁り、




ネットで検索をかけたりしたら、




ふと、あるものが目にとまった。






簡単な軽作業。




交通費支給。




日給10000円。




社会保険あり。




ボーナス※働き方次第であり。




空いた時間に働いてみませんか?






何とも魅力的な仕事だった。




何となく応募すると、




すぐに返信が来た。






エントリーありがとうございます。




日払い制なので、




本日からでも、体験として、




勤務可能でしょうか?






私は直ぐに返信して、




ある場所で待ち合わせする事にした。






待ち合わせはファミレスの駐車場。




シルバーの車の乗用車。




私が待ち合わせ場所に向かうと、




既に、車の外で待つ男性がいた。






眼鏡をかけ、髪は短め。




男「○○さんですか?」




目が合うとそう、質問された。




「はい。」




男性は自販機まで行くと、




男「飲み物はどうします?」




そう言われ、お茶を奢ってもらった。




車へと乗るように言われると、




男性はバックから数枚の用紙を取り出した。






男「一応、雇用の書類と、




簡単な仕事の流れと内容。




移動するから、酔わないなら、




目を通しておいて下さい。」




あれ、体験って聞いてたんだけどな、




男「あ、あと、




『守秘義務』




って知ってる?」




ファミレスを出る前の一時停止で




そう言われる。




「はい。」




男「良かった。




一応、体験だけど、




守秘義務は守って貰いたいんだ。




そこに大丈夫ならサインだけして。」






○○様




本日は体験して下さりありがとうございます。




ですが、体験と言えど、一応仕事ですので、




我々の会社の不利になるような情報を守る為、




守秘義務を守って頂きたく、簡単な署名を、




ここにお願いしたく申し上げます。






氏名






※上記の者は会社の不利となりうる情報を、提示、




または漏洩させない事をここに承諾した事とする。






本日は体験ありがとうございました。






そう記されていた。




少し不安も抱えながらも、




まあ、そんなもんだろと理解しサインした。






車はそんなにかからずに停車した。




そこはマンションの駐車場だった。




サインした書類を見ながら、




男性は説明を始めた。




「そうだね。




えっと、基本的には何ヵ所かに




支部みたいのがあって、




そこから依頼が来てやるって感じで、






何をやるかって言うと、まあ、




探偵みたいなもんかな。






観察?みたいな。」




「観察?」




疑問がてらに返答する。






男「例えばね?例えば何だけど、




行方不明で、所在が分からない息子とか、




夜逃げして居場所が分からない人とか、




後はまあ、いろいろなんだけど、






その人が何しててとか、家族がいるかとか、




どの時間に家に居るかとかさ。」




何だかあやふやな説明ばかりだ。




私の心情を察した様に男性は話をまく。






男「とりあえず、支部から連絡が来るから、




そこの住居に行って、本人にバレない様に、




本人の動向を探るのが僕達の仕事です。」




「はぁ。分かりました。」




捉えようのない煙を掴む様に、




何となく理解をする。




男「とりあえず、まあ、個人情報だし、




直接関わらない事と、深く介入しない事。




それが守れれば、基本的には楽だよ。






まあ、運転と待機が嫌いじゃなきゃだけど、




基本待機で、何かあったら記録して、




後はバレない様に転々とする。






もうこの場所には仕事では一生来ないし、




次はまた新しい場所に行く。」




「一回だけでいいんですか?




その1日だけで?」




もっと長居するのかと思った。




男「うん。




他にも沢山いるみたいで、




しかもほら、ずっと居ると流石に、




怪しまれちゃうでしょ?






あくまでも観察だから




だから住人や警察は少し厄介かな。






駐車場とかは、昼間はこんな風に誰も居ないし、




けど、たまに帰ってきたりしちゃうから、




そん時は間違えましたーとか迷ってとか、




そうゆう風に濁して、退散する事。






揉め事とか、面倒だしね。以上かな。」




「分かりました。」




そんなに難しくなさそうだし、




私でも出来るかもしれない。




男「理解が良くて助かる。




質問責めとか、苦手何だよね、、




とりあえず、場所に行って、




記録して、やばかったら帰る。




報告して、次の場所に移動して、




同じことを繰り返す。






月給はんー。




その人次第だけど、30ぐらいかな。」




「そんなに貰えるんですね」




移動は面倒だが、そんなに貰えるなら、




思っても無いことだ。






男「まあ、社員ならね。




基本バイトとか、パート。




日雇い何かが基本だけど、




能力や実績で、社員もあるかな。」




「そうなんですね。」




社員か、、




めんどくさそうだしな、






男「どうかな?やってみる?」




「はい。」




まあ、分かりやすいし。




聞いて嫌な顔されるよりはいいかな。




前職では、聞いたら怒られるし、




聞かなきゃ怒られるし、




もう、そんな思いしたくないしな。






男「じゃあ、書類見てもらって、




サインしてもらったら今日は終わりかな。






あ、免許とかあるかな?」




「あります。」




男「それなら書いてあったと思うけど、




自宅からの距離でガソリン代出るし、




まあ、なくても電車で行ける所とか、




支部が連絡してくれるから、




無理ない程度にね。」






始めは変な人だと思ったし、




内容もあやふやだけど、




割りきれば別にいいし、






人付き合いが苦手な私にとっては、




いい仕事だと思った。






こうして、私の仕事は始まった。
























































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監視者 影神 @kagegami

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