この鬼にも悲しい過去が!

curuss

この鬼にも悲しい過去が!

 いまさらだけど『名探偵コナン』とか『金田一少年』の影響に思えてきました。

 ジャンル的特徴なのか、推理ものは解決編の終盤で犯人自身による過去語りが多いような?

 また、あえてバトルものへ翻訳すると――


 一人目が死ぬ → 戦闘開始のゴング

 ヒントを集める過程 → 敵の特徴を把握する過程

 二人目以降が死ぬ → 敵必殺技&ピンチ演出&敵疲労フラグ

 三人目以降が死ぬor防ぐ → 主人公、反撃を開始

 犯人を前にトリックを説く過程 → 最後の全力ラッシュ応酬!

 観念した犯人による過去の開示 → 負けを確信した敵が過去を振り返る

 主人公による道徳パンチ(例「それでも人殺しはいけない!」) → KO


 だったり?

 コナンが国民的漫画と成れたのは、読者満足度の高いテンプレートをなぞる形式が大きかった?

(が、コナンは被害者一人パターンも多いような? これは「コナンは犯罪を防ぐ」を意識して?)


 少年漫画なんて――

「ただひたすら敵をしばき続けるだけ」

 との批判もありますが――

 推理ものも――

「ただひたすら犯人を断罪し続けるだけ」

 だったり。

 そして繰り返しのし易さだとか、一回ごとの限の良さだと、普通のバトルものより推理ものは優れてさえ?

(半面、主人公の劇的成長やチームで共闘などが苦手?)


 また、おそらく読者は――

「犯人(敵)だけが知ってる動機を開示されずに終わる」

 を許せないのでしょう。

(というか、これがOKだと御都合人物の乱舞へもつながる)


 例えば『幽遊白書』の仙水編では序盤で大まかな動機が語られ、最後に樹が色々と補完してくれます。

 もし、あれが無かったら仙水はマジの基地外で終わったことでしょう。

(なんとクレイジーサイコホモの樹にすら、腑に落ちるだけの動機が!)


 同作者の『HUNTER×HUNTER』で似たような立ち位置にクロロやヒソカがいますが、物語が進めば進むほど低評価に!

 これは二人の動機が詳しく語られなかったからだと、いまは思います。

 ヒソカに至っては「壊れのバトルジャンキー」以外の行動理念がなく、それでいて大物食いにも成功していないので『雑魚専』と悪口を。

 クロロは「何やら欲している求道者」と描写もされているのですが、それが何なのか開示し損ねてしまったので『ブレブレの厨二病』扱い!

 一番に大事なものが伝わってこないので、どうしても「その場その場で判断している浅い人」のイメージが付きまといます。


 やはり功罪あれど、『敵方の事情』が無ければ失敗し易く!?


 しかし、敵方の事情が読者に要求される必然でも、その分だけテンポは落ちますし、読み手側にもストレスを与えがち。

 例として挙げていいのか不明ですが、『ナルト』では過去回が頻繁に叩かれていました。

 

 ただ公平に評価して、不要な過去掘り下げは少なかったとも思います。

 あれが不評なのは、連載だと追いかけるのが苦痛だからでしょう。

 なぜか単行本で一気に振り返る場合、それほど苦痛ではありませんでしたし。

(これは少年期編が「本誌で連載を追わせる」で青年期編が「まとめて単行本で読ませる」と、書き手側で変えた可能性あり。評価の分かれている原因か)

(……下世話な言い方だけど、一定以上の固定人気を得たら、より収益の見込める単行本主体も頷ける)

(また好きなエピソードではない場合、二回目以降は丸ごとスキップという方法も通じはするから?)

(そして岸景様はサイコパス気質がおありなので、我々一般人では納得の難しい主張をされることがあります。周りがフォローしたのが『ナルト』で、誰も注意しなかったのが『サムライ8』だったり。これも作家性というものでしょうか)



 しかし、逆説的にバトルものでは、『敵の事情』の省略が許されます!


 『鬼滅の刃』は、玉壺を除くほぼ全部の敵で『悲しき過去』をやっていて、ある意味ボリュームあり過ぎです。

 無い敵が登場しても不満の声は上がらないし、無い敵は無い分だけテンポよく話を進められたり――


 あまり深く掘り下げたくない背景だった場合、都合が良い


 なんて側面も?

 

 1ページでやっつけた『半天狗の悲しき過去』は伝説級ですし、この手法はフォロワーが続く可能性も?

(これは本当に伝説レベルの『発明』だと思います)


 そして玉壺に至っては『悲しき過去』がない!

 また、それを惜しむ声も皆無!


 でも、推理ものが似たようなことをしたら――

「なんかよう分からんかったけど、こいつが殺人鬼だったんや。トリックは全て暴いてるけん、問題は無かろう?」

 となり非常にスッキリしない感じ!

 推理もので事情の説明なしだと、単なる文章パズルだから、それ!


 おそらくバトルものの敵側は――


 戦闘員 < 悲しき過去やらない怪人 < 悲しき過去やる怪人

   < 悲しき過去省略版幹部 < 悲しき過去のある幹部

       < 悲しき過去?のあるラスボス


 とヒエラルキーを組むべき?

 そして今は分かりませんが――


 悲しき過去が無かったり、触る程度で終わりな敵がいる利点


 というのも判明するだろうし?

(敵方に弁護不能な悪事をやらせたい場合とか? 「事情とか知らねーよ、死ね外道」ができる。思えば北斗の拳とか、外道は事情が掘られたりは少なかったなぁ)



 そしてユニセックス問題!


 女性にもウケるのが、昨今のキーワード。

 私は腐女子日常物の漫画とか好きなんですが、夢女子も含めて――


 女性読者というのは、勝手に人物背景を掘り下げる


 傾向にあると思います。

 ……そもそも登場キャラ(♂)と登場キャラ(♂)の恋愛なんて、がっつり妄想しなけりゃ成立しないでしょうし!?

 つまり女性読者というのは、言語化しているかどうかはさておき、登場した敵役の背景も自分なりに考えているのだと思います。

 え? そんなのは男だってやる?

 でも、生物学的にコミュ力お化けな女性の話です。我々男とはレベルが違うような?


 この辺が「男には無理な少女漫画」のある理由と思われます。

 女性なら語られずとも受け取れる情報が無いので、男目線だと意味不明となる可能性が?

 

 そして人物背景を掘り下げている場合、『悲しき過去』は答え合わせの側面も!

 やはり――


 何らかの答えが与えられないと苦しい!


 逆説的に、女性的読書法だと『悲しき過去』は大歓迎!?



〇そうろん


 世上の意見を拾った感じだと『鬼滅の刃』の『この鬼にも悲しき過去が』は、諸手を挙げての歓迎はされていない。

 しかし、明確に良い部分でもある。

(なんと名言ランキング20の内、5つが回想から。また、それらも回想が終わる部分での台詞が多く、この作家の非凡さが窺える)

(全般的に丁寧に積み上げて、最後の主題となる台詞で〆る。これが鬼滅メソッド? 半面、コマや台詞が多過ぎたり、削りきられてなくて、読み上げると諄い印象)


 だけど読者へのストレスもあるので――


 『過去回想』や『悲しき過去』は、絞れるだけ絞るべき


 そして女性読者意識なら、多くなっても構わない。だだし――


 女性が真顔で「キモっ」とか言いそうなキャラは、たぶん要らない。別の言い方すると生理的にアウトとか括られる人物像。

 おそらく、そういうことだと思う。


 以上を踏まえて、用法用量を守って『過去回想』を使って!?

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