第2話 竜族の王は多忙であった
竜姫は姫でありながら王であった。
いや、既に王であるのに少女は姫の称号を捨てきれないでいた。
「王よ、こちらの書類に目を……」
「いやじゃ……」
「は?」
臣下が目を丸くする。
その彼も竜族。頭には2本の長い角があった。
「王ではない!妾は、姫じゃ!!まだ成人前であるぞ!」
「は、はぁ……。では、姫さま。こちらの書類をご確認していただいて……。それからこちらには姫さまのご許可が必要になり。あと、昨日提出しました、農村での異常な天候への対策については……」
どんどんと、少女の王座の前には書類が溜まって山積みになっていく。
少女は、それらを一枚一枚、手に取りながら臣下の話に耳を傾けた。
「ふむ、書類はこれから目を通しておこう。農村については、会議で大臣らに意見をまとめさせ、妾がその場で決を下す。よって明日行う。急いで大臣らに言付けるように」
「はっ!して、使う資料などについては……」
「うむ、勿論王である妾が作成する」
「かしこまりました!失礼します」
臣下が去り、王の間にぽつんとひとりぼっち。
少女は山積みの書類を目に通しながら、サインをしたり、没にしたり。
青空の下で、飛び回り、駆け回ったのはいつの事だっただろうか。
「……父上、妾はまだ、遊んでいたかった……」
2年前に亡くなった父。
父を恨むつもりはない。
むしろ、父の代わりにこの竜族の国を、少女はまとめて治めていかなくていけないという使命感の方が強い。
それでも。
王という身分は、未だ少女には荷が重たくて。
上手くできているのか不安で。
「は!いかん、いかん!今日中に、書類は目を通しておかなければ」
結局、その日、少女の元には夜まで書類が提出され続け、姫王は夜中まで書類を読んで検討しなくてはいけなかった。
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