第31話 ハッピーエンド

 男達はモールの外に居た。


「やっと出られたな。あの小僧も追いつけないだろうから、今のうちに帰って計画を見直すぞ」


すると、後ろから……


「みーつけた!」

と空が男の足にしがみ付く。と、車の乗せられた。そこで、空はハッとする。


「1人でお外出たらダメって言われてる。パパとママに叱られる。僕帰る」


 泣きそうになる。


「どうする? 勢いで連れて来たけどよお」


「隣の駅で降ろせばいいだろ? 誘拐なんて想定外になるし面倒だ」


 その頃、凛と由紀は。


「遅いよ。空。トイレの前で待っているのに」



「俺、見て来るよ」


トイレに入るが誰も居ない。


「由紀! 空がいない! まだあいつテレポート使えないよな」




そこで、由紀が慌てる。


「空が泣いてる! 何故そんな所にいるの?」


 凛にも空の泣き声は聞こえていた。凛は、

「俺が行って来る。なんかヤバい奴の顔も見えるからな」


空は泣いていた。


「帰りたいよー!」


 男は大きな声で、

「黙れ!」


 男2人は焦る、空は泣き続けていた。


「どうするよお。山の中に置いて行くか? 余り近くだと、俺達の事を話されたらまずい。まあ道に置いていきゃあ、何とかなるさ」


車が止まり泣いている空は、車から降ろされた。その時、凛が現れた。



「おい! 俺の可愛い弟に何してくれてんだよ!」

凛が現れて男達に凄む。


「! 何処から来た? それに俺達はまだ何もしてないぞ」


「まだ? ってお前達、何かしようとしてたって事だよな?」

凛の表情が変わる。明らかに怒っているのが分かる。


「お兄ちゃん!」

と凛にしがみ付く、由紀も来た。


何もない所から、再び現れた人物に2人の顔が強張る。

「いつの間に……」


男2人は目を丸くして言葉が出ない。


「怖かったわね。ごめんね」


由紀が空を抱っこする、凛の顔が怖い。


「由紀、空を家に連れて帰ってくれ。こいつ等は俺があそこに連れて行く」


空は泣き止んでいた。


「そうね、じゃあ帰ろうか。空」


由紀が消える。それを見ていた男達は怯える。


「お前達は俺と一緒に来てもらう」


そう言うと凛達は警察署の前にいた。


「えー!」


驚く2人を引っ張り、中に入る。


「来い!」


「あら、凛くんどうしたの?」

 婦警さんに声をかけられた。


「こいつ等誘拐未遂犯だ。他にも叩けばいくらでも出てくるぞ」


「まあ、それはどうも」

と笑顔の婦警さんに男達は連れて行かれた。


「おや? 凛くんじゃないか。また、誰か連れて来てくれたのか?」


 他の警察官に声をかけられた。


「俺の可愛い弟を連れて行こうとしたんだ! 泣かせた分、殴ってやりたいが親父に起こられるから、まあ、な」


「いつも助かっているよ。事件の検挙率は凄いからね。でも凛くんに頼むと上から叱られてしまうから、程々にね。ご両親に宜しく」


凛は時々引ったくりや空き巣などを捕まえては連れて行っていた。事件に大きい小さいは関係無い、当時者にとっては大問題だ。そして、凛も飛んで帰る。


「ただいま」


「もう! 凛たらそんなにポンポン飛んで来ない!」


 と私に言われ拗ねる。


「でも、今回は許すわ。空を助けてくれてありがとう」


由紀が空を連れて帰って来た時は驚いたけど、空が泣いていたのがわかったから……これはアキラと相談ね。食事も終わり、空は凛とお風呂に入った後、2人に遊んで貰っていた。


「凛、由紀、明日学校でしょう? 早く寝なさい」




「んじゃあ、寝るかな。お休み」


と、2人はリビングから出る。



空は眠そうに目をこする。

「空、眠いでしょう?」


と、私と一緒に寝る。空も色々あったから疲れたのよね、直ぐ寝てしまった。そこで、アキラが帰って来た。もちろんテレポートを使って。


「ただいま。やっと明日休みがもらえた~」


「お帰りなさい! お疲れ様」

そこで気持ち良さそうに眠っている空を見ると、


「空は寝たみたいだな。可愛いよな」

と寝顔を見ながら言う。


「アキラの子供の頃にそっくりってお婆さまが言ってたわ。空もおお婆ちゃん大好きって言ってる。スマホやパソコンで話しをするのを楽しみにしているのよ」


「相変わらず色々な所に行っているからな、珍しい物を見せてその反応を楽しんでるって所か? 日本に来る時は、またデカい土産が送ってくるんだろうな。それも参るが婆ちゃんの楽しみだからな、仕方ないか」


今日の事をアキラに話す。


「そうか。凛も由紀も力が強くなってきているからな、感情が高ぶると力が制御出来なくなる。そこを教えないといけないな。それにしても空にも困ったもんだな。2人に勝てた気になって嬉しかったんだよな。明日は休みだゆっくり出来る。学校から帰ってきたら、2人に少し教えるかな」


翌日、アキラの容赦ない訓練が2人を待っている。その姿が想像出来てふっと笑う。




明日は2人の好きな物を作ってあげよう、皆どんな大人になって行くのだろう。その成長が楽しみ、凛もいづれお嫁さんをもらうのだろう、由紀もお嫁に行くのよね。その時はきっとアキラはボロボロに泣くんだわ。空はお婆の様に世界を飛び回るのだろうか、お嫁さん来てくれるかしら?



前世の悲しい記憶は今ではいい思い出となっていた。物語はハッピーエンドじゃないとね。これからまた、其々の新しいストーリーが始まる。


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