東の海
むかし、むかし。
西の海の向こうには大きな王国がありました。
私の国が掘れば取れるキレイな石たちを西の国にプレゼントすると、西の国はたくさんのきれいな着物やお皿やビンなどを交換してもらっていました。
私たちは西の国を尊敬していましたが、一生懸命勉強してなんとか追いつこうとしました。
そして、自分たちでも作れるようになると、私たちの国の一番えらい人は、国のみんなが自分よりも西の国を尊敬しては困ると思い始め、西の国のことを目の上のたんこぶだと思い始めました。
ある日、西の国へ使者を送って、こんなことを言わせました。
「日出ずる国から、日没す国へメッセージを伝える」と。
この言葉の意味は、「私の国は光が差して、どんどん成長していくいい国になっているけれど、あんたの国は日が陰ってきて、どんどん落ちぶれるるよ」という意味でした。
そんな大それたことを言えた一番えらい人を尊敬するようになりました。
みんな、西を見て、俺たちの方が優れていると言い始めました。
けれど、私はそうは思いませんでした。
「東には国がないのかなぁ?」
まわりのみんなは、「えらい人が言うのだから間違いない。我々こそが太陽に選ばれた民族だ」と言いました。
私は気になって、気になって仕方がなくなりました。
東には陸が続きます。
東には戦が強い人たちがたくさんいて、作物が実りずらい土地ばかりなので、引っ越すなら、東に行くのはバカバカしい、西へお引越した方がいいよ、とみんなして言います。
「よしっ、行ってみよう」
私は東を目指しました。
東にも海があるんじゃないかと歩きました。
何日も何日も歩きました。
山賊が出たり、お腹がすいたり、倒れそうになりながらも、ようやく海へとたどり着きました。
「わぁ・・・きれい・・・」
私が海に着くと太陽がお出迎えしてくれました。
赤く西に沈む太陽も好きでしたが、白く輝く登る太陽もとってもきれいで感動しました。
誰もいない東の海。
私だけ東の海。
海と空が無限大に広がる東の海。
西の海とは違って、何日待っても西の国のように外の国から人は来ません。
毎日、毎日、海の向こうから綺麗に太陽が昇ってきます。
もしかしたら、いつもお祈りしている神様は太陽の登るあの海の向こうにあるんじゃないかと思い始めました。
神様がいなくても、西の国よりもっと素敵な国があるかもしれない、そう思ったらいてもたってもいられませんでした。
「よしっ、行ってみよう」
私は東の海へと飛び出しました。
無限の夢が広がる東の海へと―――
大人の童話集 西東友一 @sanadayoshitune
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