ネズミとカメ

「どんくさいな、お前」


 ネズミは何をしてもおそいカメをいつもバカにしてました。

 ネズミは足がはやくて、おしゃべりで、そしてエラそうで、いろんな場所でカメの悪口を言って、カメをバカにして笑い話にしてました。


 カメはバカにされたのが悔しくて、言いました。


「ネズミくん、君が足がはやくても、きょうそうしたら負けないよ」


 すると、ネズミは大笑いしました。


「あはははっ。むりにきまってるじゃないか。じゃあ、あそこの木まできょうそうしようよ」


 ネズミは丘の上の木を指さしますが、カメは首をよこにふります。


「いいや、あそこだと君の方がゆうりだ。もっと向こうの山のてっぺんにしようよ」


 さすがにカメもたんきょりそうで勝てる気がしないので、得意な体力勝負にもちこむために、もっと先のやまのてっぺんを指さします。


「えー、めんどくさい。やっぱいいや」


 ネズミはカメを相手をするのを面倒くさくなってしまいした。


「逃げるのかい?ネズミくん」


 カメがネズミをあおります。


「人生はかぎりがあるんだから、楽しくないことやってるひまはないんだ」


 カメはいつもバカにするネズミに勝ちたいと思っていたので、必死にお願いします。


「お願いだよ、お願い。ネズミくん勝負してよ、このとおりだ」


「うーん、わかったよ・・・」


 頭を地面につけてカメがお願いするのを見て、ネズミもしぶしぶOKします。


「よしっ、ボクが勝ったら、もう二度とのろまなんて言わないでよね、ネズミくん」


「万年ビリの君に言われてもなぁ・・・。じゃあ、僕が勝ったら竜宮城に連れて行ってよ」


 カメは少し考えて、乙姫様に怒られるかもしれないと思ったけれど、カメのメンツを守るためにうなづきました。

 そして、立ち合い人に空を飛べるツルにお願いしました。


「じゃあ、いくよ・・・。位置についてよーい、どん」


 ツルはスタートの掛け声をかけた後、空へとはばたき、山のてっぺんまで飛んでいきます。


 カメがゆっくりだけど、いっしょうけんめい歩き出します。

 しかし、振り返るとネズミはお友だちのハムスターとお話していて全然走る気配がありません。


「やる気があるのかい、ネズミくん」


「あぁ、あるさ。でも、少しはハンデを上げないと。あはははっ、君がかわいそうだろカメくん」


 カメはムカッとしながらも、コツコツ歩き出しました。

 丘の上の木までは一いちもくさんで歩きました。


 木までたどり着くと、ゆっくりと回りながら振り返りますが、ネズミはいません。


「ふんっ、ボクが勝つぞっ」


 どんどんどんどん、歩いていくカメ。

 山に入ると、坂道になって足が重くなりスピードが遅くなりますが、それでも一歩一歩前へと進んでいきます。

 ゴールが見えてきましたが、ネズミはいません。


「よしっ、勝ったぞっ」


 ラストスパートをかけようとカメが気合を入れると、


「ふぁああああっ、そろそろかな」


 どこからか、ネズミの声がします。


「まさか・・・」


 ひょいっ。


「ここまで、ご苦労だったね、カメくん」


 そうです、ネズミはカメの甲羅の上にいました。

 足が重くなったのは坂道だけではなくて、ネズミが乗っていたからでした。


「じゃっ」


 カメは絶望しました。

 自分の努力は水の泡になり、楽をさせてねずみを勝たせる結果になってしまったのです。

 そして、甲羅の中へと引きこもりました。


 それを見ていた、ツルは言いました。


「これはひどい」


 ツルさんは天に羽ばたいて、天にいる神様に一部始終を伝えました。


「ふむふむ、それはかわいそうだ。よし・・・カメにはやりたいことを何でもできるように万年の時を与えよう。そして、ツルもよく報告してくれた。ツルにもおまけで千年あげよう。遅い生き物をいじめるネズミは20日だけの寿命にしよう」


 こうして、ネズミは竜宮城を満喫しましたが、もっと人生が忙しくなり、カメは他の動物と争うことなくのんびり暮らしたとさ。


 めでたし、めでたし。

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