ろくでもない現実に遊び心を加えたらシュールになる。

まず、一話読んだら次の話を押している。
ストレスなく摂取出来るから、気づいたら摘んでいるポテチの感覚。
なんでこんなに読ませるんだろうと思って、読み返すと、どの話も荒唐無稽で狐に摘まれたような気分。

しかし、待ってほしい。これは一見シュールで不条理ではあるが、どことなく他に足がついている部分もあるような気がする。爪先だけだけど。
どの話も人間味があって、社会人のため息が感じられるのである。それはきっと、家族や大切なもののために自分を捨てて働く大人が中心になっているからだろう。

ここには、主人公はいないのだ。すべからく社会の歯車で、不条理な現実に流されているだけの一般人。言うなれば、僕たちの変わり映えのない生活に、ひとつまみの遊び心を加えてくれる作品。
すごい話を読んだ。そう思った。
わかる人にはわかると思うが、ファミ通に載ってる4コマ漫画みたいな脱力感があった。

ちなみに、僕が一番好きな話は“遺書”。

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