付録 『うみねこのなく頃に』ってなに?
ちょっと考えてみましょう。
あなたは、今、自分(X)を含めて四人(A・B・C・D)の知り合いとあるコテージにいます。
その中でBが死にました。
このことについて次のことがわかっています。
①このコテージには五人以上の人間はいない。五人とはA,B,C,D,X(あなた)のことである。
②この事件において、人間以外の存在は関係ない。
③B死亡時、X(あなた)、A、C、Dの四人が生存している。四人とは名称における人数である。
④Bが死んだ場所は、彼の個室である。窓は、Bが最後に部屋に入ってから彼が死亡し死体が発見されるまで一度も開いていない。また、外部への脱出場所は、この窓一つと、部屋の扉ひとつのみである。
⑤部屋の扉にはチェーンがかかっていた。これは内部からしかかけることができない。切断した形跡もない。しかし、Bの死体発見時、A,X,C,Dの誰もその部屋の内部には潜んでいない。また、チェーンは、Bが殺害された後にかけられた。
⑥Bは毒や、未知の機械(矢を射出機するような遠隔装置や、自動射出の鉄砲など)で殺されたのではなく、ナイフによって死んだ。
このとき、魔女側は、この犯行全てを魔法によるものと主張する。
一方、人間側は一連の犯行をどうにか人間の仕業であると証明しなければならない。
魔女側と人間側のチェスに
さらに例えるなら、『そして誰もいなくなった』の一連の犯行を舞台に、人間側は、すべて人間がやったと主張し、一方の魔女側はU.N.オーエンがやったと主張するみたいな感じです。
魔女側は「赤の真実」を使えます。これは、証明不要の真実であり、人間側はこれを根拠に推理を進めることが出来るが、一方、矛盾しているような赤の真実が飛んでくると、致命傷にもなります。
例えば、上の条件⑤が赤の真実として出されてしまうと、事実上だれもBを殺せないことになります。これに対してどう返すかが人間側の腕の見せ所です。
ただし、赤の真実を言うか言わないか、言うのであればどのタイミングでいうかということは、魔女側にイニシアティブがあります。人間側は復唱要求によって魔女側から赤の真実を引っ張り出すことができますが、それに応じるかどうかは魔女側にゆだねられます。
人間側は、魔女側の主張全てを否定しなければなりません。
一方、魔女側はひとつでも人間によって解明されない事実が残っていれば勝利となります。
カイジの皇帝と奴隷のゲームのように、有利となる陣営が決まっているのです。
しかし、全くの不利というわけではありません。
人間側は「青の発言」を使うことができます。これは、その発言自体が魔女を否定するものである必要がありますが、その条件をクリアした場合、これに対して魔女側は赤の真実で切り返す「義務」が生じます。つまり復唱要求より一つ上の段階にあるということです。
では、上の条件を赤の真実としたとき、この事件はどう返すことが出来るか。
例えば、消極的推論としては、Bが「自殺」であるという主張があります。
チェーンロックは部屋の内部からしか掛けることができません。そして、窓からの脱出が出来ず、扉から出るとなるとチェーンロックをかけることができなくなる。
そうなると犯人はBが死亡した部屋にとどまらなければならないが、条件⑤により、A・X・C・Dのいずれも部屋にとどまっていないことが示されているので、それは不可能である。
よってBが自殺であるという推理が導き出される。
しかし、大体この手の推理は魔女側から棄却されます。
「Bは自殺ではない」という赤の真実が出されるからです。
あるいはこの場合、条件⑤に「Bが殺害された後にチェーンロックはかけられた」という一文があるため、Bは殺害されたということが真実とされています。
では、どうなるのか。
Bは、密室で殺害されたにもかかわらず、A,X,C,Dのいずれも犯行を行えない。
だからこそ、魔女はこれは魔女の仕業であると主張するのです。
しかし、これ、実は人間にも犯行可能だと主張することが出来るのです。もちろん殺害説で。
そのトリックを言ってしまうと、壮大なネタバレになるので、ここではやめておきます。
さて、これはあくまで例なので随分と強調しすぎた感がありますが、こういうやりとりを絶え間なく行うのが『うみねこのなく頃に』です。
『ひぐらしのなく頃に』とはずいぶんテイストが違い、かなり難易度が高いですが、興味がある方はBOOKOFFへ行きましょう。
昔書いたミステリ小説が出てきた話 蓬葉 yomoginoha @houtamiyasina
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