エピローグ

 街からかなり離れた場所にある、海の見える高台。

 そこに、簡素な墓が立っている。

 墓碑銘には『ダフネ・コルネオ』と刻まれている。

 墓の下には、この名前の女性の脳髄が埋葬されている。


 ここに墓参りに訪れるものはいない。


 巷では『カンパニー』の不正を若き地方医師が暴露し大問題となっている件や、『白の塔』の長官へ強襲班の班長が就任することや、裏社会のボスが死んだことで麻薬シンジケートが崩壊したことで大きな話題となっている。


 しかし、そんな喧騒も、この場所までは届いてこない。


 この墓を作った男は、不自由になった身体を引きずり、墓の周りに畑を作って暮らしていたようだ。

 しかし、街からは赤黒い廃液が流れ込み、土壌を汚染し続けており、ろくな野菜を作ることはできなかった。


 男はそのすぐ後、突如発生した大洪水に巻き込まれ、死亡したとされている。

 男の経歴や詳細を知るものは、誰もいない。

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鉄と油と火のない世界の魔法使い くねくね @kunekune_hn

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