『陰陽師』という言葉に惹かれて読み始めた本作。
陰陽師モノを求めていた当初の私にとっては異なるお話でしたが、気がつくと夢中になり読んでいました。
まず最初に言わせてください。とにかく日本語が美しい。
難しい言葉を特別使っているわけではないのですが、こんなにも美しい文章で表現できるのかと読むほどに圧倒されました。
難しい言葉でも字を見れば意味の分かるものばかりなのです。
主人公・蒼樹ハルが不思議な猫と出会ってから、次々と起こる怪奇事件に彼は翻弄されていきます。怖がりながらもハルは自分の身に構うことなく立ち向かい、果敢に戦っていきます。一つ一つ謎が解き明かされるごとに、ハルの心も成長していく過程が胸を震わせます。
魅力的なキャラクターも次々と登場し、敵となりあるいは味方となり、ハルを取り巻いていきます。
全ての謎が分かった時、私は再度冒頭を読み返さずにはいられませんでした。大切な者を思うあまりの憎しみと、八百年もの思いが解き放たれた時は打ち震えました。
〝心に何かを残す物語を〟というキャッチフレーズのとおり、この物語には作家様が大切に綿密に構成された強い想いを感じました。
是非もっと多くの方に読んでいただきたい作品です。