踏み外す彼女⑦

 なんかクリスが違う。そう思ったのは練習を始めてすぐの事だった。この物語に出てくるクリスはずかしがり屋であまり堂々としていない。例の高校の文化祭の動画でもわかるように、ひかえめな子だ。ただそんな中に純粋じゅんすいな真っ直ぐさがある。

 ん?ちょっと待てよ。今クリスを演じてるのは?

 動画の中では小麦色の短い髪をした背の低い女の子。しかし、目の前にいる彼女は、黒髪ロングの饒舌じょうぜつ美女である。無理がある。イメージと全然違う。

 ということで一度二人で例のYM tubeの動画を観てみる事にした。

「うん、無理があるな」

「私そんなにひどい?」

「ひどいというか、キャラが違いすぎるんだよ」

 うぅと頭を抱える美波。

 二人で悩んだ末、俺は一つ思いついた。

「1人いい奴がいる」

「急に何?」

「そいつは明日連れてくるとして、今日は家に帰ってこの動画を満足するまで見ろ」

 俺は美波の質問に答えなかった。

 美波はちょっと眉を寄せたが、気にしないことにした。コイツがアイツと会ったらどうなるのか、楽しみだから名前は出さないでおこう。

 じゃぁと言って俺が荷物を取りに立ち上がると座ってる美波に袖をつままれた。くっと引っ張られて俺はバランスを崩す。

「私、MY tubeって初めて見たんだけど、この動画ってどうやったら見れるの?」

「そっからかよ!?」

俺は見方を手取り足取りやり方を教えてあげた。

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