踏み外す彼女④
「貴方には関係のないことだけれど、勘違いされたままなのも
美波は腕を胸の下で組み、爪先でパタパタ床を叩きながら言う。不機嫌である。完全に俺のせいだ。でも、腕を胸の下で組むことで豊満な胸が強調されている。というか胸の大きさ的にその位置でしか腕が組めない。なんかエロいな。この状況でそんなことを考える俺。うん、マゾかな。
だが、そんな俺をよそに話は続いていた。
「私はただ、女優になるために新しい努力を始めただけよ。アイドルだなんてそんな夢見てないわ。だいたいアイドルって可哀想よね、貴方みたいなキモオタにフガフガ言われなきゃいけないなんて」
なるほど、夢見る少女じゃいられないというわけか。つまり、相川七瀬にはならないと。
だが今はそんなことどうでもよかった。
「一言余計だ。俺を馬鹿にするのは構わないが、アイドルに対して可哀想とか思うな。アイドルってのは夢と希望を与える職業なんだよ。それを素敵だと思ってなった奴らにそんな感情を抱くな。失礼だろ」
俺は美波の出過ぎた言いようについカチンときていた。
だってそうだろう。今言ったようにやりたくて、なりたくて、やっとの思いでなったアイドルという職業を否定したんだ。俺はそうやって人が尊いと思うことを物事の一端だけで判断して否定するのが嫌いだ。
俺の言葉に目を逸らす美波。「ごめんなさい」と軽く頭を下げた。こういう素直なとこは悪くないんだよな。だから高嶺の花であり、自信家なんだろう。
「その考え方は改めるわ。だからとは言わないけれど、貴方に協力して欲しい」
アイドルは子供っぽいとか思ったのかな。それが逆に子供っぽい。まぁ可愛いとこもあるということで許してやろう。
「わかった。じゃぁ、あし」たから多目的室でやろう。
と言おうとしたが、美波はそれをかき消すように俺に命令した。
「ありがとう。さっそく多目的室でやるわよ。使用の許可はもう取ってあるから」
さすが、完璧主義者と言ったところだろうか。多目的室の使用許可まで取ってるとは、俺を付き合わせる気満々だったってことか。たぶん断っても無理矢理連れてくか、柴原を味方に付けて説得させられてただろう。おぉ怖い。
「失礼しました」
と言ってペコリと頭を下げる美波。頭を上げるとくるっときびすを返して「行くわよ」と少し腰を振りながら歩いて英語科を出て行く。
黒いタイツ越しに見える肉感。腰を振るせいでヒラっヒラっと揺れる短いスカートが反則である。腰まで伸びたサラサラの黒髪が色気をより一層引き立てる。うん、エロい!最高!
俺もついて行くために一歩踏み出そうとした時、「おい」と柴原に呼び止められた。
「なんすか?」
「変なことすんなよ?」
ニヤリと笑って彼がそう言った。
「しねぇーよ!」
思わずタメ口になった。
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