踏み外す彼女③
この女に俺はバスケ部でかなり苦しめられたのだ。女子の部長は遥香だったが、
「それより、お前みたいな完璧なヤツがが俺に頼みなんてないだろ」
なんかムカついたので皮肉を込めて言ってやった。
「相変わらずね。そういう固定的な考えだから貴方はダメなのよ」
普通科だからって機械科の俺を完全に舐めてやがる。
人類皆平等!差別反対!偏差値がちょっと高いからって調子に乗るな。たった4だぞ4!冷静に考えて偏差値4の差は大きい。
「私は貴方に付き合って欲しいのよ」
ほら見ろ、またあんなこと言っている。俺に付き合ってくれだ?馬鹿にするのも程々に… え?付き合って欲しい?聞き間違えか?この子何言っちゃってんの?!
「つ、付き合うってなんだよ」
意味のわからないことを言っている女を今度こそ馬鹿にしてやろうと思ったが、言ったことがあれだったので、言葉に詰まってしまった。体の方は正直らしい。
「まさか貴方、付き合うって男女交際の事だと思ったの?まったく呆れるわ。どこまでもめでたい思考をしているのね。第一私が貴方を好きになることなんて天地がひっくり返ってもありえないわ。
高嶺の花ヒロイン美波
「まぁ、そうだよなー」
俺は思いっきり冷めた棒読みで言った。
「かと言ってすぐにそうやって冷めるのも気にくわないけれど」
どっちだよ。優柔不断。ツンデレか。俺はツンデレ好きじゃないけど世の男子はツンデレに弱い。何故かはわからない。俺は二より四が好きだ。俺の妹も二が可愛いと言っている。よくわからん。
不機嫌な美波は「とにかく」と続ける。
「一週間後のオーディションまで私の練習相手になって。それが私の依頼よ」
「あぁ、わかっ」
と、そこまで言いかけて。俺は口を止めた。今なんて言った?オーディション?何、アイドルにでもなるの?美波由依らしからぬ考えだな。
「なんだお前、アイドルにでもなるのか?」
何言ってんだ俺は。ばか。今の美波にこんなこと言ったらぶちぎれるに決まってる。アイドルだけに、このあとは漏れなく罵倒の嵐だろう。また柴原が喜ぶ。今すぐ「じゃーにー」って言って逃げ出したい。
“ユー逃げちゃいなよ”
はっ!今、天の声が聞こえたような。
「は?」
ほらね。美波のクール、もといコールドな切れ長の目で睨まれ、俺は現実に引き戻された。これが結構怖い。メデューサかってぐらい怖い。石にされる。
というのも単純な睨まれた怖さではないのだ。彼女を敵に回した時、学校中の女子は大体彼女の味方をする。なのでこの恐怖は大勢を敵に回してしまったという絶望感からである。美波の目が鋭いのは事実です。
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