踏み外す彼女②
コンコンコン。
適当にノックして扉を開ける。
「失礼します」
「失礼するなら帰れー」
おい、呼びつけたのお前だろ。本当に帰るぞ。俺は柴原の冗談なんて完全に無視してずかずか彼のもとまで入っていく。どうやら柴原以外に誰もいないようだ。英語科、とついでに社会科は、うなぎの寝床みたいな部屋なので二人だけとはいえ、
俺の1人ノリツッコミはさておき、柴原は何やらプリントに真っ赤なペンでまるやらレ点チェックやらを入れている。あぁ、今日の授業でやった小テストか。どれどれ俺のは…
「ゴラァ、
俺が覗いたのが見えたのか、声だけで
「それで、頼みって何ですか?」
俺は仕切り直すように言った。それを聞いた柴原も手を止めて、近くにあったノートをプリントの上に載せる。くそっ、徹底してやがる。ディフェンスに
柴原は「コホン」と咳払いをして話を始める。
「実はな、ある女子生徒が」
そこまで言ったとき、背後の扉がコン、コン、コンと
「失礼します」
ハキハキとした声がそう言った。俺は振り返る。柴原は沈黙。うむ、さすがに言いませんよね。期待してたけど。てか俺だけにやるのは、いわゆるハラスメントってやつでは?シバハラスメントだ!何でもかんでもハラスメントにしたがる今の世の中は窮屈だ。正に「ハラスメントハラスメント」毎日ハラハラしてしまう。
柴原は「いらっしゃい」と目尻を下げる。うわー、女の子見てニヤつくとか、俺と一緒じゃん。は?一緒にすんな!
「彼女が?依頼主ですか?」
色々含むところはあったが、それは一旦置いといて、本題に入るよう促す。
柴原は彼女を見つめたまま「そうや」と頷く。俺は小さくため息を吐いた。
「どういう風の吹き回しだよ、
長いサラサラの黒髪を揺らして入ってくる彼女。一歩踏み出す毎に腰を振る。お前はモデルか。ランウェイで笑ってこい。
「あら、わざわざフルネームで呼ぶの?私もバスケ部だったはずだけど、
俺を見下すような言葉遣い。
「誰が忘れるか、お前みたいな完璧主義者。忘れたくても忘れてられねーよ」
俺がそう言うと、美波は「そう」と驚いて目をまんまるにした。くっ、可愛い。普段クールビューティーな彼女の
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