それでも車輪は転がり続ける③

 学校から最寄もよりのホームセンター。ユニィに着いた俺と冬磨は自転車を止め、店内へ向かった。

 自動ドアをくぐると色とりどりの商品が目に飛び込んでくる。ホームセンター特有の木の匂いがどこからともなくただっている。俺も冬磨もこういうのが好きだ。それぞれ全然違った色や形をした商品たちが店内を彩っている。

 雑然ざつぜんとした雰囲気の中を歩いて目的の物を探す。 自転車修理セットはすぐに見つかった。ゴムパッドとゴムのり、あとタイヤレバー(タイヤを開いたまま固定する道具)がセットになってるやつだ。冬磨がニヤニヤと俺とパンク修理セットを交互に見る。なんだよまだ引っ張るのかよ。

 そんな彼を押し退けてレジに向かった。レジ横に置いてあるエアダスターを手に取って財布を出して順番を待っていると、冬磨は俺が無視してるせいで退屈なのか手持ち無沙汰ぶさたにスマホをいじり始めた。

 2人の間に流れる沈黙。俺は別に平気だが、冬磨の方は意外と寂しがり屋でこういう沈黙は苦手だ。スマホを見ながらムズムズと動いている。俺がチラッと冬磨の方を見るとそれに気づいて、目線が合う。目線が合うとニヤッと彼が笑う。なんか気まずくなり目を逸らす。付き合いたてのカップルみたいだな、気持ち悪い。

「なんだよ」

「なんでもない」

 会計を済ませて店を出で自転車のところまで戻ってきた俺と冬磨。まだ6月とはいえ、だいぶ暑くなってきた空の下、エアコンの効いた店内と比べると少々暑い。

 自転車にまたがって、店の敷地を出たところで冬磨が口を開く。

「じゃぁ、俺帰るわ」

「おう、わかった」

「またな、2人によろしく」

そう言ってあっさりと走り去って行く。どんどん小さくなっていく背中はやがて角を曲がって見えなくなった。それを律儀りちぎに見送ってから俺は自転車を漕ぎ始めた。1人になった帰り道。みょうな寂しさを感じて、行きよりも速く自転車を漕いだ。

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