その放課後は今までと少し違って④


 言われた通り中央棟2階の管理室に行くと、ハイこれと電気ケトルと紙コップを渡された。もちろん一番重い電気ケトルはは俺が受け取る。あっ!という間にすぐにくやつだ。これ使ったことないから意外と楽しみだったりする。聞くところによると去年の万部が買って使ってた物らしい。あの部屋だとよごれるからと部が活動してない時期は管理室で保管していてくれた様だ。先代部長マジ優能ゆうのう。琴羽姉ナイスプレー!。後でお礼の連絡入れとこ。

 俺達は部室に戻ると早速さっそく電気ケトルに水を入れてスイッチを入れた。コーという音と共に加熱が始まる。

「「「おぉ!」」」

俺たち3人の感動の声が重なった。それに気づいてクスクスと顔を見合わせて笑い合う。こんな何でもないやりとりが、たまらなくいとおしく感じた。こういうのが続けばいいと、少ししんみりしてしまった。

 しばらくの間今日起こったこととか他愛のない雑談をしていると、清佳のすぐ側でカチッとにぶい音が鳴った。

「あ、もう沸いた。ホントにあっという間だ。」

 遥香がつぶやいたとき、ある重要なことに気がついた

「だねって私らお湯だけ沸かして飲む物用意してない!」

「あ、確かに。何やってんだよこれ」

俺はおかしくなって声を出して笑った。清佳と遥香も笑った。

「琴羽姉からのお小遣いで何か買いに行くか」

そういえばと思い出し、銀色のチープな缶を開けながらそういうと、

「そーだね」

清佳がうなずいて、

「私ケーキ!」

遥香が元気よく手をげた。

 ケーキ買って千円で足りるかなと首をかしげる清佳に対して、いざとなったらタクが出すから大丈夫と自信満々な遥香。何が大丈夫なんだか。

 俺はお前らの財布じゃねぇと思いながら、今日くらいは出しても良いかなと思える。そんな放課後だった。

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