アフターミーティング

放課後は楽しむべきだ①

 その日の放課後。俺は部室で熱々のストレートティーをすすっていた。ちなみにお嬢様方たちはといえば、それぞれアニメの推しキャラ自慢をしている。清佳はライトニングイレブンの「豪火ゴウカシュウ」、遥香の方は合唱の星の「日向ヒナタアオイ」と騒いでいる。アニトーークは良いものだ。微笑ましい。

 ただ、あまりに興奮しすぎて時折長机に乗り出すものだから、揺れる。報告書を書いてる人がいるのでそういうのはやめて欲しい。

 あと二人とも前屈みにならないで、襟元から見えちゃいけないものがチラつくよ。

 拓偉君はお年頃なんだから、少しは気にして。不思議と目が吸い寄せられる。これが万乳引力の(以下略)

「報告書書いてんだよ。揺らすな」

「そんなの知らないよ。よそでやれば良いじゃん、ねー?キヨ」

いやいや無茶言うな。一応この部の報告書だからね。ここで書くのが筋でしょ?

「そうだよ、拓偉が悪い」

はい出た超理論!ここに僕の居場所はないんですか?いくらなんでも酷くないですか?仮にも部長ですよ?

「てか、なんで一番働いた俺が書かなきゃいけないんだよ。お前ら代わりに書いてよ」

「だって拓偉が一番活躍したわけだし」

「そうそう、タクにしかわからないこともあるのだぁ」

くそう。それは最もだ。ムカつくやつらだゼ。それと遥香の「あるのだぁ」が可愛かった。もっかい言って。

「じっとしてるから、文句言わなないで書く!」

「わあったよ」

清佳のオカンみたいな一言に俺は仕方なく従った。

 紙にペンを落とす。

 清佳がまた長机に乗り出す。

 ガタンッ。

 さっそく揺れた。あーくそっ。

 そうこうしていると「こんにちは」と誰かが入ってきた。その声の主は、今回の加害者であり被害者の鶴島だ。

「どうも、この度は色々とありがとうございます」

鶴島はペコリと丁寧に頭を下げた。それに対して清佳が「いいよいいよ」とお茶を差し出す。鶴島はそれを受け取って口をつけた。

「あの後どうなったんだ?」

俺は紙に顔を向けたまま、気になっていた事を尋ねてみた。

「タク、あんな素っ気なくいなくなったくせに気になってたの?」

「いや別に、報告書のために聞いただけだ」

「またまた〜めちゃくちゃ気になってたくせに。優しいな、拓偉は」

「うっせぇ、思ってもねぇこと言うな」

清佳に優しいと褒められると満更でもない。けどちょっと辛い。

「そんなことないけど」

なんでもない顔で言う清佳に俺は痛く心をえぐられたあ。本当にやめてくれ。悪意がないから逆に辛いんだ。

 鶴島は今のやりとりを見て笑ってから、話を始めた。

「先輩達が帰ったあ後、裕也っていうイケメンの一言で沙木が謝って、みんなで和解しました。これからはみんなで褒め合って行こうって」

照れ臭そうに言う。

「そうか。楽しくやれよ」

「は、はい」

「「素っ気な!」」

二人の声が綺麗に重なった。

 と、そこへまた一人やってきた。

「こんにちはー!」

元気いっぱいに入ってくるのはもちろんこの娘。

 あざと可愛い後輩ちゃん。今回の被害者であり加害者の沙木空音だ。左手で敬礼をしながら入ってくる。なんてあざといんだ。いいともうぞ、もっとやれ。

「って鶴島!?なんでいんの?」

「そ、そりゃ俺もお世話になったし」

「あ、そかそか〜。もうお礼言ったんでしょ?用が済んだらならすぐ出てく」

そう言って無理やり鶴島の手を引く。わぁお、強引。怒涛のボディタッチ。こういうのに男の子は勘違いしちゃうんだよな。

 そのまま沙木は鶴島を追い出す。鶴島は「うわー」と言って姿を消した。

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