そしてゆっくりと歩き出す③

 と、いうことで。テニス部の活動場所であるテニスコートに向けて出発だ。テニスコートは体育館を出て右へ数メートル。体育館の横にあるのですぐに到着する。

 さぁ行こうと意気込んで、クルッと左に90度ターンしたところでポケットのスマホがブー、ブーと2回 った。いや鳴ってない。そんな変な着信音してない。正しくはバイブレーションだ。

 ポケットから取り出してスマホの画面を確認する。

有力情報ゆうりょくじょうほうゲット!』

そして

『テニス部に仲良い子がいるみたいだから行ってくるね』

とメッセージがそれぞれ別の差出人さしだしにんから入っていた。前者が遥香、後者が清佳である。わざわざ分けるなよ、どっちに返信しようか迷うだろ。というか3人のグループがあるんだから、そっちにすればいいでしょうが。とりあえず両方に同じスタンプを送っておいた。ゆずのキャラクターがオッケーって言いながらOKマークを手で作ってるやつだ。

 一足遅かったかとスマホをポケットにしまいながら、何気なく左を見ると二つの人影が近づいてくる。どうやら2人とも女子生徒のようで、ヒラヒラとお互いに丈の違うスカートをなびかせて、戯れあっている。うむ、眼福眼福。

「何じっと見てるの?」

どうやら見入ってしまったらしい。当人達とうにんたちに声をかけられた。あれ、やばくね?

「タク?どしたの?ぼーっとして」

 そこで俺は気がつく。彼女たちが自分の知人だということに。

「おう、別に」

俺はしどろもどろに適当な返事をした。2人はふーんという感じで特に気にしてない様子。大丈夫バレてなかった。

「そういえばメッセ見た?」

遥香が不意にそんなことを訊いていた。メッセ?幕張まくはりメッセですか。夏になると恐竜博やるんだよなあそこ。去年はギガ恐竜展だった。清佳と行ったな。なんて余計なことは置いておいて。

「見たよ、テニス部だろ。俺もちょうど行こうとしてたとこ」

「あそう。じゃぁ一緒に行こっか」

あっけらかんと遥香が言ったので、俺たちは3人でテニスコートへ向かった。

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