就職のために単身上京した青年と、ちょっと風変わりなそのお隣さんの女性の、小さな恋の始まりの物語。
ただし、主な舞台はなんと乱交パーティの現場、という、そのギャップだけですでに面白いお話。こうして見ると結構な飛び道具のようですが、でも物語そのものは非常に丁寧かつ細やか、普通に初々しい恋愛劇をやってみせるのだからとてつもない。
特筆すべきはやはり中盤以降、物語の主軸たる乱交パーティの様子です。
まさに日常の中の非日常。普段はまったく縁がなくとも、きっとこの世のどこかには普通にある(のかもしれない)光景。もちろん、主人公には参加経験もなければ予備知識もなく、その目線で描かれる〝知らない世界〟の、その臨場感に大変ドキドキさせられました。
また、その内容がことさらに淫靡なものではなく、いやエロティックではあるのですけれど浮世離れはしていないというか、「あくまで現実の人々の営為であること」を感じさせてくれる点がまた素敵。
パーティの場で出会うコウジさんやミカさんの、一個の人間としての自然な存在感。なにより、肝心の丸山さんがちゃんと魅力的というか、「読み終えた時点でより魅力的に感じられる」ところが本当にいい!
恋の始まりを描いたお話としては、あまりに風変わりなシチュエーション。しかしその描写の誠実さが、物語の説得力としてモリモリ効いている、とても満足感の高い作品でした。本当に自分が現場を覗いているかのようなドキドキ感が大好き!