第5話
「生まれた時から邪魔者だったみたいなんだ」
緒方君は生い立ちから一つ一つ順を追って話してくれた。
―16年前―
緒方千颯という名の一人の男の子がこの世に誕生した。彼は周囲から見ても仲が良いとは言い難い両親の中で育てられた。彼の生活はすべて最低限で、愛情を注がれることはなかった。
「生まなければよかった」「話しかけないで」「近寄らないで」「気持ち悪い」それが母親の口癖で機嫌の悪い日は失神するまで首を絞められることもあった。
小学校2年生の頃に父親と離婚をし、おもちゃ代わりとして母親の方についていくことになった。母親は世間体を気にしていたため、暴力などは続いていたものの学校には行かせていた。食事などは用意されず、家中の食べ物でどうにかしていたため、病気になることは多かった。
そんな風に人間としてではなく生きている人形のように育てられてきていたが、小学校、中学校と両親以外の人間に触れる機会の中で彼は自分の両親が普通ではないこと、自分には表情というものや感情というものがあり、それを使いこなす方法など普通を知り、誰にも悟られることなく自然に演じることができるようになっていた。
ある日、ふと自分がロボットのように中身がないことを実感して、気が付いたら家を飛び出してコンビニにいた。
「そして今日に到るって感じかな」
彼は辛そうにはしていたがそれを隠すように僕に口を開く隙を与えず、淡々と話した。
愛を愁える 瀬高 海 @setaka_kai
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