ガラスの街
忍野木しか
ガラスの街
白い水晶。透き通る光。
ガラスの街は波状の水面のように穏やかだ。空に浮かぶ道は陽を透過する。ガラスの川を流れる水が地上に落ちる。
声は滑らかな街を木霊した。雨が降れば共鳴するガラスは、叩き付ける水滴で美しい音色を奏でた。彩られる宝玉の市街地。天を貫くガラスの塔。春には桜の花が街を流れ、柔らかい雲の影が街を泳ぐ。
一途に耀く月の光が夜の街に降り注いだ。
紅い硬玉。屈折する光。
ガラスの街は染み出す湧き水のように滑らかだ。空を映す窓は風を遮断する。ガラスの屋根に溜まる黄砂が地上に落ちる。
目で透き通る街を見渡せた。雨が降れば共鳴するガラスは、摩擦する土砂で美しい音色を奏でた。細やかな彫刻の家々。地に聳えるガラスの城塞。夏には青葉の緑が街を覆い、激しい陽の光が街を飾る。
一面に瞬く星の明かりが夜の街を覗き込んだ。
黒い真珠。薄く曇る光。
ガラスの街は渓流の泡沫のように鮮やかだ。空に回る風車は砂を巻き込む。ガラスの壁を引っ掻く木の葉が地上に落ちる。
指がひび割れた街で傷付いた。雨が降れば共鳴するガラスは、叩きつける風で美しい音を奏でた。割れた噴水の広場。海へと続くガラスの運河。秋には錆びた葉が街を走り、寂しい西の風が街を震わす。
一つに澱む雲の暗さが夜の街を包み込んだ。
白いガラス。遮られた光。
ガラスの街は轟く滝の飛沫のように煌びやかだ。空に飛び散る破片は雪を切り裂く。ガラスの街を凍らす水が地上に落ちる。
体を崩れ去る街に沈めた。雨が降れば共鳴するガラスは、砕け散る氷で美しい音を奏でた。鋭利な街の残骸。永遠に語られるガラスの街。冬には舞い散る雪に覆われて、儚い街は眠りにつく。
無限に広がる空はガラスの街の夢を見た。
ガラスの街 忍野木しか @yura526
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます