第12話 祭り立てられて

 S病院内の看護実習期間が終わって数日後、S病院から合同指導者反省会があるとの連絡が来た。それに際して、大森教務主任と他2名の教員がヒソヒソと立ち話をしていて、大森教務主任の苦々しそうな声が漏れ聞こえた。

「今まで合同反省会なんて、したことがなかったのに! まるで、祭り立てるようなものじゃない、見世物じゃないのよ」

 そこに、祥子と他に二名の若い教員が通りかかり大森教務主任が祥子にこう言った。

「あなたは無理に出席しなくてもいいから」

「出席しますよ」と応えているが、祥子は役不足だから言われたのだと勘違いしていた。

 

 S病院の実習指導者反省会では、7・8人で一グループになって実習指導者が書いた数名のプロセスレコードを元にして討論会が行われた。そして何故だか白田さんのケースも対象になっていて、それにより祥子にも意見が求められた。本来ならば開示されているプロセスレコードのとは別の視点で学生への指導方法を見出し、それを発表すべきところではあったのだが、祥子の目には白田さんと学生は良好な関係が築かれていて、スムーズに実習が行われていたように見えていたので、

「反省する箇所は見当たりません」と正直に発言し、さらに白田さんの事を褒め称えた。それに際して誰からも反論はなかった、その時の白田さんの表情は口角をギュッと閉じていて悔しそうだった。おそらく祥子の代りに怒ってくれていたのだろう。また周囲から

「あの人が?」という囁き声が漏れ聞こえていた。


 産休代行の臨時教員の採用期間終了間近、校舎の窓からS病院の工事中の建屋を見ていた、そのときに大森教務主任が祥子にこう言った。

「もうこんなに建設が進んでいる、あれはカルテ管理棟よ、貴女のおかげで、あんなに立派な管理棟が建ったのよ」

「意味がわかりません」と言うと

「貴女のカルテも守られるから安心してね」と言われたが、理解ができなかった。

 当時建設中だったカルテ管理棟建屋をホームページで探してみたが、その名目の建屋は見つからなかったが現在の研究棟の位置に相当している。


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