第6話 婦人科の噂話

 ある人からS病院内での六林医師にまつわる噂話を聞かせて貰った。

「兄はK大学医学部婦人科の名誉教授だったのに、六林医師自身は悪名医師として有名だったとか、女性冒涜が甚だしく沢山の患者さんを泣かせていたとか、そんな風だから婦人科は閑古鳥が鳴いていたとか、婦人科外来担当になった看護師は直ぐに辞めていったとか、いつもレントゲン室でぶらぶらしていたとか、自分の手術でもないのに手術室に覗きに来ていたとか、S病院で働く女性たちが健診を受ける時には絶対に別の病院で受けていたとか、診察の仕方が変態だった、例えば、看護師が不在の時に内診をしていて、カーテンを開けると目の高さに最大に開脚させられたままの患者が血を流されたまま放置されていた、それも若い娘さんだったとか・・・」


 診察室の変態ぶりのくだりを聞いて、


「その子は多分、私ですよ、私が内診室に促された時、デスクには看護師がいましたよ、だから内診台に上がったのに、なぜ付いてくれなかったのかしら、もしかして炎上させられるような面白そうな出来事を待っていたのではないでしょうか」と言うと

「看護師さん達の事を悪く言ってやりたくない、とにかく担当するナースが定着せずに、暴言も吐かれるしストレスが溜まっていたらしい」

「でも担当しているからには、そんな噂が流れることを恥だと思いませんか、私だったら、六林に用事を言いつけられたとしても、悪さをするのだと勘が働くはずだから絶対に場所を離れたりはしませんよ、閑古鳥が鳴いていたなら、言いつけられた用事も急務ではなかったはずです、こんなことがあった、あんなことがあったと言いふらすのは、自分で自分の不始末を言いふらしているようなものですから、炎上させられる現場を面白がって待っていたとしか思えません、私はその看護師が憎いです」

「貴女の言うことは正論やと思うよ、でもあの医師は無茶苦茶で、誰もが手を焼いていたから、悪いのは医者や」

「そんなに無茶苦茶なら、もしかしたら男子事務員も入れていた可能性はありませんか」

「それは、聞いたことないけどな・・」

「それでは診察に研修医とかが付くことはないですか」

「閑古鳥が鳴くくらいやから、外来医師は一人しかおらん」

「診察室にはもう一人いましたよ、診察台が上がっていたから足が見えましたよ」

 電話を切ってから内診室での一コマが詳しく蘇ってきた。

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