8.もう遅い

 いや俺なんも悪いことしてねえし、とこの期に及んで反抗心がなくもなかったが。珍しく恥ずかしそうにもじもじしているアキが真剣に可愛くて。

「おう、今日はなんでもきいてやるぞ」

 妙な漢気でうっかり請け負ってしまったことを、俺は死ぬほど後悔することになる。


 ちなみに蛇足だが、こじゃれたダイニングバーの片隅で繰り広げられた俺とアキの痴話喧嘩(?)は多くの知人たちに目撃され、これまた終生忘れえない黒歴史となったのであった。





「あああああ、アキさんっ」

「キヨシくんてば、そんなカオもできるんだね。カワイイ」

 下着姿で俺の上に跨ったアキはうふふと上機嫌だ。両手を拘束され、コトの流れに俺は怯えるしかない。ドウシテコウナッタ。


「わたしね、キヨシくんみたいに俺様な子を管理してみたかったの。三平でキヨシくんを見かけたとき、キタコレーッて興奮したの。めっちゃ好みだったから」

「おお俺も……」

 アキが膝小僧で俺の宝物をすりすりするのが心地よくて声が上擦る。ちきしょう、なんだこれ。


「だよねー。キヨシくんてばちらっちら胸ばっかり見るからいけると思ったんだ。だからワインバーに先回りして……」

「は?」

「え?」

「さ、先回り??」

「やぁだ、当たり前でしょ」

 俺の乳首をぐりぐりしながら顔を寄せてきたアキはにこりと笑った。

「偶然だと思ってた? あっは、意外にロマンチストなんだから」

「ま、まさか、今夜のコンパも……」

「キヨシくんて鈍感だよねー。わたしがいつも見てるの気づかなかった?」

 それ犯罪、ストーカー! きゃーと血の気が引いたがもう遅い。俺はばっちりしっかり最初からアキに狙われていたのだ。ナンテコッタ。


「うふふ。今日が初めてだから無理しないでさせてあげるからね。でもわたしがいいって言うまで出しちゃダメだよ? もうよそでシなくていいようにいーっぱい搾ってあげるからね」

 スリップの胸元から俺の大好きなちっぱいがチラ見えする。すべてはちっぱいのせい。俺はちっぱいに負けたのだ。


 そうして俺が新しい世界にダイブしたのかどうかは、みなさまの想像におまかせしよう。ちっぱいに乾杯。



case one END

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ロマンスにはほどとおい 奈月沙耶 @chibi915

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