第40話:公爵令嬢の周年祭 1
生まれて? 初めての旅行から帰って幾日、もう幾つ寝ると~状態の俺です。
何がって?
エアリースの誕生日なんですよこれがああああ!
いやぁ~、好き勝手してきたけど、なんのかんのでもう一つ年をくっちまうのかぁ。
感慨深いねぇ。
誕生日会みたいな事は出来るのかな?
それとも、残された記憶のように、家族達からだけ
「オメデトウ~」
なんて言われて、無理な願いでも一つだけ聞いてくれるってのだけかな?
いや、それすらももしかしたら怪しいな…。
なんたって、そのせいで馬車のトビラから転げ落ちてエアリースは死んでしまった訳だ…。
さっそく、今日の夕食にでもお父様達に聞いてみなければ。
…なんて思っていたら、夕食前にお父様に部屋へ呼び出された。
「良く来てくれたね、リース。
用件についてだけど、あと二週間ほどで君の誕生日だ。
去年までは、家族で内内のお祝いだけに留めてきたけれど、今年の誕生日はそれがちょっと難しい。
もう君も社交デビューしてしまっているし、お披露目の生誕パーティーを未だにやってないからね。
だから、あまり人が多く集まるのは気が引けるかもしれないけれど、今年は頑張っておくれ…。
なるべく短く、招待する方々も少なく済むように準備はしているからね」
「あら、有難う御座います。
年の瀬にあった、お兄様のお誕生日のような感じだと思えば宜しいのでしょうか?」
「そうだね、生誕パーティーは大体立食形式になってしまうだろうね。
あの日は君もヘトヘトになっていたものなぁ…。
今年は、主役をやらないといけないから、もっと大変だ。
何か、お望みはあるかな?」
「やはりそうですか…。
望み、ですか。そうですね…。
それでは、こんな事は出来るでしょうか?
パーティーを通常よりもかなり早めに始めさせて頂いて……───…」
ちょっとした悪巧みだ。
お父様も、俺の言うことだからな、全く反対せず、むしろパーティーを外注にすればとかアイデアまで頂いた。
お父様のアドバイス通り、外注にお願いするとして、そんなものは俺一人でどうこうなどは出来ない。
ということで、お父様の後にお母様の部屋へ行き、お父様と話した内容と、協力の取りつけをする。
もちろん、二人きりの密談だよ!
さらに夕食後、お兄様にも同様の話をして、協力を取り付けた。
外への手はずは、お母様が秘密裏に行ってくれるようだ。
会場は、誕生日パーティをする大ホールとは別のもう少し少ない人数の場合に使う舞踏会場にする。
下手な部屋だと、外から入れなくなっていたりするのだが、この二つの会場のみ、外から直接はいる事が出来るように造られている。
さらには、屋敷の反対側に位置しているので、一部の使用人以外に見られる心配も無いのが大変素晴らしい。
翌日からの十日間は、それはもう必死だった。
主役なので、誕生パーティー中に二回お色直しが行われる。
その分の衣装に、予備の衣装、さらには次の分の衣装の打ち合わせ。
お兄様に協力してもらっての、ダンスの再度の猛特訓。
お母様のみに任せるわけには、言いだしっぺとしていけないので、外注した会場の設営相談。
パーティー業者などと言うものは無く、貴族ならば各家が個別でやるのが普通な為、お母様と懇意にしているという他家にお願いをしている。
そうなると、他家は公爵家相手に勝手など出来ない為、アレコレの指示は全てこちらでしなくてはいけないのだ。
しかも、忍兵他数名にしかバレずに舞踏会場へ出入りしつつ搬入なんかも行って貰わなければいけないので、かなりの重労働だ。
そして、そんな事を平気で行える家は相当少なく…お母様が懇意にしてる方にお願いした相手は、まさかの王妃、バヨネッタ様であった…。
胃が…胃が痛てえ……。
それからも、ゆっくりお茶を飲んで本なぞを読んでいた日々が懐かしくなるような、目まぐるしい日々が続いた。
その甲斐あって、準備もバッチリ間に合ったよ!
ただ…あの日お母様からのお願いを受けるにあたってバヨネッタ様から条件をもらってしまったらしく、それが何なのかちょっと怖い…。
俺に悪影響のあるものじゃなければ良いんだが…。
「何てことの無い事よ~、ウフフ」
とか言って終わっちゃったから、マジで分からん…。
さて、どうなることやら…。
と言っている間に、もう当日がやってきてしまった。
パーティ開始は、異例も異例の昼の音一時の鐘から。
それでも、そんな異例なパーティの為、十日前から告知。
二週間以上前からお父様が招待状自体は送っているので、参加者の把握は出来ていた為、とても円滑に告知作業も終わらせることが出来た。
ちなみに、パーティへの参加不参加は、この国では可能な限り迅速に返答をする事が美徳とされている。
昔の記憶では、参加ならそれなりに早くだが、不参加なら予定調整の為に頑張ったという意思を見せる為に遅く返すなんて文化もあった。
が、基本的に衣装が手作業で時間の掛かるこんな世界では、それをしていたらとてもではないが間に合わない為、出るならさっさと返事を書いた上で急いで準備を始めるのが常識となっている。
まぁ、本来の招待状の送付が一週間前が通例なんてタイト過ぎるスケジュールなせいもあると、俺は思ってるけどね…。
さぁ、こんなに早く始まるもんだから、朝早くから戦争だ。
屋敷中が盆と正月を足したような状況に陥っております。
実況している俺も、正直実況している場合では御座いません。
いそげ! いそげ!!
公爵令嬢にTS転生したけど、とりあえず好きに生きるわ もりゅ @moryu3648
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。公爵令嬢にTS転生したけど、とりあえず好きに生きるわの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます