おこめのちから

 おこめをざっざと、おててでとくと、

 きらきらおみずがはんしゃして、

 こぽこぽおこめがいきをする。


 ざっざ、しゃっしゃ。


 台所でいつも聞いたお米の音は、

 今私の家でも毎日聞こえる。


 おばあちゃんが別れ際、

「おいしいごはんたべてよ」といった。


 だから私はその日、お寿司を食べた。

 おばあちゃんの亡くなる前の日だった。


 あのとき、おすしを食べなければ、

 おばあちゃんと一緒にいられたかな、なんて思うけれど、

 おばあちゃんは言ったんだ。

「おいしいごはんたべてよ」


 だから私はお米を食べる。

 だから私は命を頂く。


 【いただきます】と手を合せ、

 【ごちそうさま】と頭を下げる。


 なんだか礼拝みたいだ。


 こんな、弱い、お魚でも、

 私の血となり肉となる。


 こんな、大きい、お肉でも、

 私の血となり肉となる。


 「おいしいものたべてよ」


 その言葉を考える。


 【食べることは生きること】


 私はおばあちゃんの為に生きる。

 私にごはんを作ってくれた、ちょっと料理が下手なお母さんの為に料理を作る。


 ざっざ、しゃっしゃ。

 おいしいごはん、たけたかな。


 ざっざ、しゃっしゃ。

 きょうも、どろんこじゃりみち、のそのそ歩く。

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