第3-3話 図書室の奥ー③


「ふむ、それは避けるべきだろうな。同じ部員になるのだから弁明、解消は入部をしてもらってからで遅くはない。何より一番優先されるのは入部してもらうことであるから、少しでも確率は上げておくべきだな。というわけで! 頼んだぞ!」


「メガネに関しては・・・そうだな。俺が行くよ」



 申し訳なさそうに困った笑みを浮かべる月代と、申し訳ないとは欠片も思ってなさそうに笑うメガネ。正直かなり荷が重たいがやるしかない。



「失敗しても文句は言うなよ?」


「大丈夫だろう! 上手くやれるさ!」



 自分が行かないからって無責任な、とは思ったが自分が行くことになっていても態度は変わっていなかったのだろう。後ろを向きたいときにこうも前向きな姿勢を見せられるのは、背中を押してもらっているようでありがたい。まあ、実際に押してくれているのだが。



「すみませんがよろしくお願いします。会った印象なんですが、なんというか、あまり強く話しかけないほうがいいと思います。少なくとも自分から話すタイプではないでしょうし、相手の方の出方を窺いながら話されるのが良いかと」



 何も情報がない、なんなら顔も名前も知らない相手を口説こうという中でのアドバイスはとてもありがたく、月代の言葉を大事に飲み込む。自分も積極的に話しかけに行くタイプではないが、恐らくその比ではないのだろう。


 ここまでのヒントは先生の言う趣味が似通っている点、そして今のアドバイスの二点のみで、後は自分で組み立てなければならない。その場になれば用意した話し方なんてほとんど意味がないのだろうが、それでも悩まずにはいられなかった。



 それからは特にこれといって大きな話題もなく、何が面白いどこに行ってみたいテストがどうだの話してその場を後にした。



 二人と別れて帰宅しようと考えたが、頭の中では先ほどの話が全くまとまらずグルグルしていた。タイミングはいつでもいいのだろうが、部活を始めたいのなら早い行動に越したことはない。校内で気兼ねなく話す場所を作るといった意味でも、それは同じことだ。


 だが何を用意すればいいのだろう。趣味が同じようなものと言っても俺はメガネほど各方面に精通してなければ、これが好きという強い入れ込みを持つ作品も持ち合わせていない。中途半端な自分がうらめしい。


 そう考えながら歩いていれば、行きつく先は自ずと見えてくる。



「市場調査じゃないけど、何もしないよりマシだよな」



 初めて一人で訪れたのは、ここまでずっと縁のある駅前の本屋だった。


 

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ぼくらの平成漫遊記 ふらフラット @i9zina4

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