人類絶滅のシナリオ

青山 忠義

人類は無敵ですか?

 21世紀に入ると、様々な病原菌が人類に襲いかかり世界中を何度もパンデミックに陥れた。

 大部分の学者たちは、

「今まで、人類は病原菌に打ち勝ってきた。今度も大したことはない。大袈裟に騒ぎすぎだ」

「病原菌も感染する宿主が必要だから、たとえ、どんな変異をしても宿主を絶滅させるようなことはない」

「この病原菌で死亡する人よりも経済的理由で自殺する人の方が多い。もっと経済のことを考えるべきだ」

 と、声高に主張して悲観論を唱える人たちの声を封じ込める。

 そして、その主張を裏付けるように人類はワクチンや治療薬を開発して病原菌に打ち勝っていたように見えた。

 だが、人類の数は病原菌以外にも戦争、災害、事故、不衛生、自殺、殺人等の犯罪、その他の病気などによる死亡、様々な要因による出生率の低下などによりその数が減っていった。

 その一方で、人類が減少するのとは、反比例するように自然は復活していく。

 森林伐採などにより消えていくはずだった森に徐々に木々が生え、気候変動により砂漠化していたところに川が流れ緑が生い茂り、海洋汚染により汚されていた海が昔の美しさを取り戻し始めた。

 その自然の変化によって、絶滅動物が蘇り、絶滅危惧種が増加した。その数が自然法則に逆らわない繁殖により人類を超えた。

 病原菌たちは新しい宿主を見つけたとばかりに変異を繰り返し減少し始めた人類に向かって強毒性を強めて襲いかかってくる。

 人類は経済との両立を重視するため病原菌たちの変異についていけず、全てが後手に回ってしまう。

 いくら化学が発展しても、人類は転生することもなく、異世界に逃げることも宇宙に新天地を求めることができず、病原菌たちに蹂躙されていく。

 やがて、

人類は絶滅した。


 創造主はため息をつき、「やっぱり、また駄目だった」かと、呟いた。

 創造主は人類に憐れみを施す神でも、救世主でもない。

 創造主は傍観者であり、観察者である。

 創造主はまた新しい人類を作り始めた。


 

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人類絶滅のシナリオ 青山 忠義 @josef

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