農園カフェのプレオープンパーティー!

 今日はレストランのプレオープンの日です!!

 お天気にも恵まれて、気温だって暑がらず寒からずのガーデンパーティー日和。


 大人数でやるパーティーといえば、やっぱりバーベキューでしょ!!

 こんがり焼けたお肉に腸詰、燻製肉に畑から直送のお野菜達。

 つけダレは玉ねぎの塩だれ、トマトのサルサソース、子供向けにチーズの入ったホワイトソースベースのチーズソース、香草入りヨーグルトソースを用意した。

 焼けたお肉にサルサソースにヨーグルトソースといったら、やっぱりサンドかと、ピタパンと手巻きできるトルティーヤも用意した。

 どっちもフライパンで焼けて、簡単便利で美味しい。


 デザートはヨーグルトアイスに生クリームと色々フルーツのシロップ漬けを混ぜ込んで固めたアイスケーキと早速送ってもらったコーヒーでアフォガード!


 ここはまずこれからお世話になるミューリーズの町の皆さんをご招待してって……。


「ねぇ、なんでお義兄さん、ここにいるのよ!」


 私は予定とは違う状況にうろたえる。

 私、疲れて目がおかしいのかな?

 なんか王妃様っぽい姿も見える気がするんだけど。

 ちなみに初めてお会いした時、教わった礼儀作法で“陛下”と呼んだら、“そこは兄と呼んで欲しい。其方はエードルフの奥方なのだからな”と何故かめっちゃ念を押された。


「兄上達、ハルナの料理が食べたいからって、来ちゃった!」


 さすがに陛下、いやお義兄さんは服装も髪色も目の色も変えて、フリーチェさんと楽しそうに談笑してるけど……。

 あああ、フリーチェさんは下町育ちでちょっと……いやかなりワイルドな男。

 ほ、ほら、背中をバンバン叩いて、ドボドボエールを注いでるぅ!!

 私は血の気が引いた。


「だ、団長? あれ、ふ、不敬罪……は?」

「まぁ、大丈夫じゃない? 王都の下町じゃ『つむじ風のレオン』って通り名で結構有名なんだよ、兄上」


 のほほんとお肉や腸詰を焼きながら団長は答える。

 陛下がごろつきに絡まれると、相手が勝手に倒れたことからついた通り名なのだそうだが……。

 いや、多分それ宰相様が護衛を回してるんじゃないかなぁ。

 あの頭はきっと地毛じゃなく、気苦労して白化したに違いない。

 ……それこそ魔力水のリセットが間に合わないくらいに。

 全くやべぇ兄弟だ! 宰相様のご苦労が偲ばれる。

 私は王都に向かって合掌した。

 宰相様の毛根が長生きしますように。

 南無〜


「ハルナちゃん!」

「団長さん!!」

「早くっ!」

「早く!」

「「一緒に食べよっ!!」」


 ガスティーさんの娘、マリーちゃんとセシリアちゃんがお揃いのよそ行きに可愛いエプロン姿でまとわりつき、私達をみんなの輪に引っ張る。


「行こう、ハルナ」

「うん!!」


 差し出された左手を握り込むと、指先に団長の左手の薬指に嵌めている結婚指輪が当たる。

 こっそり指輪を撫でて、ひとり悦に入る。


「お父さん!」

「お父さん!!」

「「連れてきたよ!」」


 二人はドヤ顔でハモり、ガスティーさんに報告した。


「よしよし。娘たちよ、よくやった!」


 ガスティーさんは二人を雑に褒め称え、パンパンと手を打ってみんなの注目を集める。


「うぉーし! 全員集まったところで新会員様のご挨拶だ。心して聞け!!」


 商店組合の組合長の一言でざわめきは引いて、招待客の視線は私達に注がれる。

 宿屋のガスティーさんと看板娘のマリーちゃんにセシリアちゃん、肉屋のフリーチェさんとその奥さんのパメラさん、団長のお兄さんにルドヴィルさんと婚約者のソフィアさん、シルヴァン君にアーヴィンさん。

 他にもたくさんの顔見知りが来てくれて、私達のお店のオープンをお祝いに駆けつけてくれた。

 隣を見上げれば、一番支えになって助けてくれて、最大限の理解者。

 私、ここに来て、本当に随分と多くの人に助けてもらってたんだと、改めて実感する。


「じゃぁ、一緒に言おっか?」

「うん! 今日は記念すべき開店だもんね」


 ――いらっしゃいませ!!

 ――農園カフェ『東の塔』へ

 ――美味しいもので、ゆっくりしてってくださいね!!

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彼氏にフラれたアラフォー女子が不測の事態によりうっかり素っ裸で異世界転移しましたがイケメン騎士様が寝床とマントをくれてついでに年齢が巻き戻ったので何とか幸せをつかめそうです ななしあおい @nanashiaoi

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