第2話 転生編
しかも、普通のトラックではない。なにせ、トラックは、赤信号だというのに、進んでいたのだから。
運悪く、それに私は気がつかなかった。気がついたときには、目の前だった。
「えっ! うそ、居眠り運転?!」
――私は当然のように、トラックにぶつかって、死んでしまった。
……はずだった。
「魂XXXマシン、ボディへの定着率96%…… 98%…… 99%…… 100%…… 成功を確認全フェーズをシャットダウン」
1879年(明治12年)8月31日午前8時12分。
私が次に目が覚めた時は、目の前に若い和服姿の男女が大勢いる中で出産をされていた。
「明宮嘉仁親王殿下、――――!」
「よしひと、――――」
え、え? え?えぇぇ????
恐らく日本語だ。でも、古臭い言葉…いつの時代だろうか?
喧々とする中、 女官であろうかと思わしき人が哺乳瓶を準備しているのを発見した。
数十秒ほど経過したのであろうか、だがしかし頭が混乱して何もできない。
そうこうしているうちに、そう。軽々と私を持ち上げて……
ああ、そこでようやく気がついた。どうやら転生してしまったらしいと。
「あぁ最悪だ――――」
時は少し先に進み1880年(明治13年)11月1日。
明宮嘉仁親王はいつものように目を覚ました。だが、彼自身は全てにひどく動揺していた。
「何が何だかまったく――――」
「明宮嘉仁親王殿下。慶子ですよ。お早う御座います。雲一つない良いお天気ですね」
「おはようございます。」
(にしても広い屋敷だ…自分が小さいだけなのか?)
とりあえず上半身を起こしてあたりを見回す。明らかにマンションの部屋ではない。
しかも、いつもより明らかに視線が低い。まるで体が幼児のようだ。
いや実際今は1歳の幼児なのだが──
(嘘だろ、こんな事って有るのかよ…)
今日は何をしようかと悩んでいると、一人の男が自室に入ってきた。
中山忠能である。(皇太子は伝統により里子に出されている)
「おお、嘉仁、起きていたか。おはよう」
そういってにこやかに話しかける忠能だが、つい先ほど物心がついた嘉仁は誰だか分からない。
とりあえず小首をかしげてみると、忠能は困惑している様な顔をして
「た だ や す だ。そろそろ覚えてほしいなあ」
と言った。
「た だ や す ?……」
「そう、た だ や す だ。よく言えたね、えらいぞ嘉仁」
「それはそうとこの一年大変であったが最近は立派に育ってくれてうれしいよ」
「うん!(ああ、そう言えば大正天皇は幼少期から良くなかったな)」
(今、俺は1歳の……それも皇太子なのか)
創建になった事を、満面の笑みで言葉をかける忠能とは対照的に、自分はどうしたものか。
「さあ嘉仁、今日は快晴ですよ!私と一緒に、庭で遊びましょう!。」
慶子に連れられて、いまだ難しい顔をしたままの嘉仁は、部屋の外へと連れ出されるのであった。
栄光への懸け橋~世界大戦を駆け抜けた最後の帝国~ @risakoumitu
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