第58話  メイドと屋敷

 話しが終わった後コウ達の世話をしてくれるのは、城付けのメイド長だった。各種の段取りや手配をしてくれるのはありがたい話であった。


 予め国王との話し合いの後に服の採寸などを行うと言っていたが、話が終わり、退出する時に国王に聞かれた。


「そうそう、確認するのを忘れるところだったが、コー殿は住むところはどうされるおつもりだ?ナタリーは寄宿舎に入っていたようだが、宿舎に入られるのか?」


「えーとですね。それに関しては寄宿舎に必ず入らなければならないのでしょうか?」


「いや。それは自由だ。ナタリーは身分を隠していたから寄宿舎の方が都合が良かったが、普通地元の者だとかは自宅から、地方から来ている貴族や商人等は屋敷か学園の近くに部屋を借りる。中には家を買ってそこから通う者も居る。魔法学校は町外れにあるので家はそれなりにある。必要なら家を手配さるがどうだろう?その方が都合が良かろう?」


「そうですね。ただ、住む所を手配して頂くといってもお金が掛りますよね?そうですね、ナタリーによるとかなり価値があるらしいですが、これで支払えるかどうか分かりませんが、これで手配して頂く家の費用は何とかなるでしょうか?」


 不思議そうな顔をしている国王をよそに、コウは収納の中に入れている中で最大の魔石を出した。コウはせっせと魔石作りに励んでおり、先日フレンダがこれで家が建つと言っていた魔石よりも更に大きい魔石を作っていたのだ。


 まだその場に残っていた宮廷魔術師がその魔石を見た瞬間に腰を抜かしていた。


「これは凄いですな。この町の結界を維持するのにこの魔石ひとつで1年は持つ魔力量がありますぞ!これを一体どこで?」


 本来であれば国王の手前、宮廷魔術師の団長とはいえ、話に割って入るというのは失礼どころか不敬に当たるが、その狼狽ぶりから国王は黙って見る事にした。


 コウはおもむろに収納から、普通は魔法封じと言われている魔導具を出した。


「説明しますが、少し前置きがあります。実はこれは魔法封じではありません。これは本来皆さんが知っている使い方は間違いです。そうですね、今から高魔力の魔石を作りますから見ていてください。今からこれにこのしょぼい魔石をセットします。そうすると魔法封じが発動しますが、私はその状況でも魔法が使えます。正確に言うと魔法ではなく、魔力を使った魔力弾を放てます」


 そう言うと開いている窓から上空に向かって魔力弾をドドドドドと放った。


「こちらを見てください」


 そうすると魔法封じの魔導具にセットされていた魔石が、ふた回りかそれぐらい大きくなっていた。ビー玉サイズだったものがゴルフボールぐらいにまで大きくなっていたのだ。


「これはこういう使い方をするための魔導具です。皆さんこれの使い方を勘違いされているようですが、これはあくまでも魔石に魔力を注入する魔力チャージ機ですよ。魔力を1万吸われるので、魔力量1万がないと魔法が発動できないので、今では魔法封じとしてしか使われていないようですが、魔力1万を持って行かれますか、魔法を放つ事ができます。なので私が今5発立て続けに魔力弾を放ちましたが、これで約5万の魔力が注入されました。どうぞ確認ください」


 宮廷魔道士の団長に魔道具から抜き取った魔石を渡した。


「確かにあの小さな魔石がこのような立派な魔石になっておる。これは驚いた!」


「大きな魔石は価値があると聞いています。お金の方はこれからこれらの魔石を売って確保しようとしていたので正直価値が分からないですが、この街で家を買えるものなのでしょうか?」


「コ、コウ殿、その、あれがあれば大抵の貴族が住まうような立派なお屋敷が一つ買えますぞ。ただあの辺りにはそのような屋敷がありませんが」


「そんなに大きな屋敷はいらないですよ。そうですね。宏海と僕達パーティー全員を入れて5人程度が住めればそれでいいですよ。みんなも一緒に住むうって事でいいよね?」


 4人が頷いていた。


「そんなに大きな屋敷なんかあっても俺には管理もできないですし、なんか居心地が悪いと思うので」


「そ、そんなわけには。これほどの魔石を渡さて、小さな家を渡すなどという事はとてもではないですが陛下の手前出来ませぬぞ」


 側に控えていた王家付きのメイド長が助け舟を出した。


「団長様、それでしたらこの人数が住むのにふさわしい大きさの家に止めるとして、料理人やメイドをお付けするのはいかがでしょうか?私がお付きとして参る訳にはいけませんが、私の部下のメイド達であればすぐにお付けいたす事が可能にございます。陛下、よろしいですね?。家事をする者がおりましたら勉学に集中も出来ましょう」


「おう!さすがそなたは気の利く事を言うな。どうだろうコー殿?コー殿達5人が住まうに相応しいふ大きさの家に止めては。貴族が住むような屋敷は要らぬと言うのであれば、せめて身の回りの世話をする者を付けさせてはくれぬか?」


「そうですわね。それではご厚意に甘え、お願いしたいと思いますわ」


「ナタリー王女がそう言うなら、お願いしようかな。はい陛下。ありがとうございます。そうしていただけると助かります。ご配慮痛み入ります」


「そうだな、元々身の回りの世話をする者を付けるつもりではあったのだ。そなた達には洗濯のような些細な事に時間を取られて欲しくはないのだ。魔王軍の本格的な侵攻に備え、申し訳ないがコー達には可能な限り強くなって頂くしか我が国の未来はないと思っておる。そのために全面的に協力させて欲しいとお願いするところであったのだ。それにこれだけのものを提供されれば、我らとてそれ相応に報いさせてもらおうと思う。ただ流石に今日明日というわけにも行かぬと思うから、城に滞在するか、どこか宿に泊まられるかになるから、どうするか決めて欲しいのだ」


 そうして、あれよあれよと言う間に、メイドと家の手配をしてもらう事になったのであった。

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聖女様は男の娘!?〜聖女召喚されましたが俺普通の男です〜 鍵弓 @keybow5963

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