第2話「吠えろ、赤きエース」

――― 1回の表 宮崎フェニックスの攻撃は 

                    1番 ライト 武  背番号3 ―――


「先頭バッターは昨年エリーグ首位打者のタイトルを獲った武 源信(たけ げんしん)です。」


 昨年の対フェニックス戦では7勝17敗と大きく負け越しており、四国にとって因縁の相手である。とくに武には毎回先頭でランナーを許しており四国ファンは祈るばかりだ。


赤羽の第1球。外角のスライダーは外れてボール。


かなりいい球だったが、武はゆうゆうと見逃した。



第2球。ストレートが内角に決まりストライク。


今日の赤羽はギアが違っていた。

昨シーズンまで立ち上がりでの被弾が多くゲームでも「スロースターター」と言われていたりと序盤に苦しんでいたが、今日の赤羽は球が走っている。



第3球、低めのチェンジアップで空振りをとる。


あの首位打者の武が赤羽にてんてこまいになっている。四国ファンだけでなく、ビジターファンまで赤羽の虜になっているようだ。


カウント1ボール2ストライク。

第4球、ファストボールかと思われたが、急激にブレーキが利きバッターの手前ですとんと落ちた。


武は耐えられず三振、なんとあの武に空振り三振を奪う。


この瞬間四国ファンは脳内で「今年は違う。」と強く感じた。4国年連続でBクラス、四国だから四位より上に行けないなど、本当に悔しかった昨年とはまるで違った。


四国を背負う大エースの赤羽の背中が、紅く燃えているように見えた。


「三振!ここで赤羽見事なピッチング!塚本新監督に勝利を授けたいその思いがこもっています!」


「また三振!初回を三者凡退で押さえましたライジングサンズ!今年は何か違うぞ!」



「タイスケ!お前...... 変わったな」

そう声をかけるのは、アマチュア時代から紅い四国ユニフォームをともに背負っていた中島 泰史。普段は寡黙な印象の赤羽だが、中島の前では素が出せると語っている。


「お前先頭だろ? 早く打席につけ」


「わかってるわかってる。絶対今日は勝とうな」


「了解」


――― 1回の裏 四国中央ライジングサンズの攻撃は 

                  1番 センター 中島  背番号1 ―――



四国の大球場に、先頭バッター・中島のコールが響く。


4月の空に、鳴り物とファンの応援が聞こえるなか、中島はおもむろに打席に着く。


打席に入るいつものルーティンを終え、ピッチャーを睨みつける。


宮崎フェニックスの先発は、皆川強(みながわ つよし)。

昨年ルーキーイヤーで10勝3敗。ローテの軸としてシーズン通して稼働し新人王を勝ち取った。


一球目、低めの直球はボール。

中島の睨みが利いているのか、少し力が抜けている印象だった。


二球目、内角へのカットボールが少し外れてボール。

バッターはびくともしない。まさに仁王立ちだ。


そんな中、中島の応援歌が鳴り響く。


「熱い思い白球に 紅く燃える魂 光速で 音速で 今解き放て~♪」


「かっとばせ~ タイシ!」


三球目、甘く入ったストレートを見事に打ちかえす。


「これは!いいぞ!伸びている!ぐんぐん伸びて入りました! ホームランです!」


「中島、開幕戦で決めましたホームラン!今日好調の赤羽を援護するソロホームランでさっそく先制します!」


「今日の四国は何かが違います!」


開幕戦、1回終わって0-1。

さっそくリードした四国。勝つことはできるか?

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ライジングサンズよ永遠に なっかのう @ekiben_kuitaina

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