カウントダウン②

この前いったじゃん。手伝うって。

あれって私と一緒にって意味じゃなかったの。

なんで別の女のとこ手伝ってんの。

しかも楽しそうに喋っちゃって。

誰にでもそんな顔見せて。ずるい。


.....にだけ。


「おーい、櫻木〜。ちょっとこっちも手伝ってよ。」


ハッと我に帰る。文香が櫻木にこっちを手伝えと催促をしている。


ちょっと..!まだ、心の準備が...!


「いまいくよ。...ごめん鮫島さんたち、ちょっと別のとこも手伝ってくるね。」


「邪魔になんないようにしっかりやれよ〜。」


「わ、わかってるよ!」


「ははは〜いってら〜。」


また仲良く喋ってるし。


「それでこっちも同じ感じの作業やってるの?」


「見りゃわかるでしょー見りゃー。こっちのペース遅いからさ、他のとこより進んでないの。」


「そうだったんだ...。」


「だから今一番優先してあんたが手伝わなきゃいけないのはここ!分かった!?」


「はい..!分かりました!」

なに敬語で返事してんだか。このバカ。


「んじゃ、うちら喉乾いたから自販機行ってくるから先進めといて〜。」


「えっ!?ちょ...!」


「櫻木と優希〜あとは頼んだから〜」


なんで私は連れてかないのよ!これじゃぁ櫻木と二人きり....ってむりむり!無理だってこんなん!


「じゃぁ、ちゃちゃっとやっちゃおっか。あとどこ塗ればいいの?」


「.....ここ。」


「りょーかい!」

なにテキパキ進めてんの!さっきみたいな会話は!?どうでもいいような会話はどこ!?


「こんな感じかな?」


「.......いいんじゃない?」


「......?」


「有栖川さん...?」


「なに?」


「い、いや、なんでもないよ...。」

あぁまただ。また沈黙。理由は明確で対処方法もわかっている。それなのに....


「それにしてもペンキの匂いがすごいね。教室中に染み渡ってるよ。文化祭終わっても残ってるんじゃない?」


「...はは。そーかもね。」


「.......。」


「もうすぐ本番だけど、他のクラスの出し物どんなのか知ってる?絵画並べたり庭にジェットコースターとか!すごいよね!有栖川さんは.....」


「...なに?」


「う、ううん!なんでもないよ!」


「もうこっちはいいから、別のとこ行けば。」


「えっ..。」


「....そうだね。また手伝えそうなことあったらいってね。」

なんで。なんでそんなに優しく言えるの。一方的に私が毛嫌いしている態度をとっているのに。不機嫌になってもいいのに。どうして文句の一つもでないの。


「おぉ!櫻木!ちょうどいいところにきた!これとこれとこれのペンキ塗りなんだけどよ....」


「いや、多すぎるよ。どれだけあるの..!」


別の場所で見せている笑顔が嫌で。

それは私だけのものだって。

そうやって誰にでも見せるところが嫌い。

誰にでも優しいところが嫌い。

誰にも贔屓しないのが嫌い。


何も上手くいかない。

まともに会話すらできない。

笑顔で話すこともできない。

私は、私が大嫌い。

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まだ、幼馴染み! ペペロンチーノ @peri1

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