あっ

雪音 愛美


私の部屋の押し入れ。


なにか、いるの。


だってね、この前見たんだよ。


夜に私の枕元でうごうごと動く黒いもの。


押し入れから出てきたんだ、見てたから知ってるもん。


気になったから、のぞいてみようと押し入れを開けたんだ。


上下に分かれている押し入れの上の段にね、穴があったの。


なんの穴かは知らないけど、すごく小さくて、目を凝らさないと見えないくらいの、穴。


最初は怖くて見たくなかったんだけどね、どうしても気になって気になって。


ある日、見ちゃったんだ。


そしたらね?


なあんにもなかったの。


えっ?ほんとだよ?


誰かがこっちを見てる訳でもないし、ナニカがそこにいる訳でもない。


でもね。


その日から、おうちがおかしくなっちゃった。


誰もいないのに誰かいる気配がしたり、扉が勝手に閉まったり、窓が開いてたり。


一番驚いたのはね、寝てる時にひやっとしたものが足に触ったことなんだぁ。


ほんとだもん、ちゃんと見たし聞いたし感じたんだよ。


でもおかしいよねぇ。


なんでおうち、変になっちゃったんだろう?


前まではこんなこと、なかったのに。


おかしいね。


やっぱり、あの穴のせいかなぁ?


最近ずっと夢に見るんだよ。


なんかねー、黒い影が寝てる私の周りに集まっててね、ずっとずっと死にたいって言ってるの。


ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと


死にたいって。


うーん、特に変わったこともないから、大丈夫なのかな。


気の迷いかもしれないね。


あ、穴の中にね、鏡があったんだよ!


そう、姿が映る鏡。


とっても綺麗でね、思わず持ってきちゃった!


え?


そんなことより後ろを見ろ?


どうしてそんな事言うのさぁ、ねぇ、ほら見てみて!


とっても綺麗でしょう?


これの裏にね、お札が貼られてたんだけど取れかけてるから剥がしちゃった。


うん?


なあんにも起こってないから安心して!


大丈夫だよ、全然元気だし!


ね?


うん?いいから早く後ろを見ろ?


なんで?


ねぇなんでそんな顔するの?ねぇなんでそんな離れてくの?ねぇなんで僕だけいつも仲間外れなの?ねぇなんで?


なんで僕の事をきちんとみないの?


なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで



「…あのさ、さっきからずっと聞きたかったんだけどさ」






「お前、だれ?」




























《ぐしゃっ、びちゃり、どちゃっ》














あっ

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あっ 雪音 愛美 @yukimegu-san

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