第5話

『好きなものは何?』

あれ夢?

多分、保育園の園長先生かな

園児みんなに優しくて、温かな先生

絵本を片手に皆に読み聞かせをしている

昼間の明かりがカーテンに射して

うさぎ組の園児は真剣に聞いている

僕もその一人だった。


『好きなものは何?』

この本は記憶にあって

大切な人や物はいつかなくなってしまうけど

心にはずっと残るものという話

内容はありきたりかも知れないけど

僕は、好きだった。


読み聞かせが終わり

それぞれ園児はおもちゃで遊んだり

走り回っている

何となく教室を見渡して気づくと人気がなくなって

静かになった


「あれ、みんなは?」

一通り園を探したけど全く誰一人いない

門の方から誰かが立っている

直感的に母親のような感じがした

白いワンピースを着ていて

手招きをしている

僕はその方へ歩いていくと

夢から覚めた


時計を見ると深夜2時過ぎ雨が降っていた

寝室から襖を開けて冷蔵庫からトマトジュースを取り出す

コップに注ぎ飲み干すと

「起きてたの?」


「うん」

小夜はそう言うと目を擦り同じくトマトジュースをコップに注ぎ

飲み干す


「怖い夢でも見た?」


「怖いというか懐かしい夢だな」


「そっか」


「小夜」


「なに?」


「好きなものは何」


「全然、ないかな・・・うん、分からない」


「分からないか」

小夜は部屋に戻っていった

あの母親に似てるあの人

どこか、小夜に似てる気がする

まさかと思いながら部屋に戻って床に就く

明日は何も予定はないが

雨の音を聞きながら眠ろう


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小夜と 藤林 光太郎 @yamada-Takumi

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